2012 Fiscal Year Research-status Report
明治二十年前後におけるボール表紙本を中心とした埋没作家・作品の実証的研究
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23520244
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Research Institution | Seijo University |
Principal Investigator |
池田 一彦 成城大学, 文芸学部, 教授 (10184417)
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Keywords | ボール表紙 / 埋没作家 / 埋没作品 / 明治文学 |
Research Abstract |
従来の明治文学史、特に初期・中期のそれから洩れている、今日忘れ去られたり埋没してしまっている作家と作品の発掘・調査・研究を、明治二十年前後のボール表紙本を中心として、実証的に遂行して行くのが、本課題の目的である。今日から見て見直すべき価値ありと認められる作家・作品を、一つ一つ具体的に吟味・検証して行こうとするものだが、先ずは戯作的創作物を主たる対象とすることとし、その原本を中心とした資料収集、作家単位の著作物読み込みとその主要作品の研究、論文化、段階的なデータベース化を図る。 平成24年度は、前年度に引き続き、南柯堂夢笑道人・萩倉耕造とその著作に関する研究を推し進めた。夢笑道人は、明治21年唯一の純然たる小説『決闘状』で文界にデビュー、続く『法律擬判 詐欺』で半ば小説半ば判決文という奇作を試み、以下『仏教不滅亡論』をはじめとする宗教的な述作と活動に仕事の方向を転じた。そこで、当時流行した「決闘」に題材を取りオムニバス形式で五つの決闘にまつわるエピソードを創作した『決闘状』について論文化を完成させ(「南柯堂夢笑道人『決闘状』ヲ読ム」)、次いで、近来起こるべき「詐欺」の案件二十件をそれぞれ短編小説化して描き、当時の判決を当てはめた『詐欺』の小説的側面を取り上げて論文化した(「南柯堂夢笑道人『法律擬判 詐欺』ノート」)。南柯堂夢笑道人については、右が本邦初の研究成果であると言えると同時に、少なくとも彼については以上の研究でほぼ文学史的欠落を補填し得たと思う。その後、次なる研究対象として取り上げる価値のあると認められる埋没作家・作品を決定し、更なる研究の進展を目指すべく、目下収集してきた資料・原本等の読み込み中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本課題において、調査・研究対象とする明治期ボール表紙本を中心とした明治期刊行物の原本及び複写を継続的に集められたこと、それらの読み込み・整理の過程の中で、研究対象作家・作品を南柯堂夢笑道人こと萩倉耕造に先ずは絞り込み、その著作活動を明らかにして、文学的な著作『決闘状』並びに『法律擬判 詐欺』を発掘、それについて紹介・考察を行い、それぞれ論文化することが出来たので、上記区分のような自己点検による評価を下した。以上は、南柯堂夢笑道人・萩倉耕造についての初の研究成果であり、当初の目的通りに既存の文学史の欠落を一部たりとも埋め得たと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
平成23,24年度の研究方針を踏襲して、明治二十年前後を中心とした主として文学的著作物の原本・複写の収集を継続、読み込みを進めて行き、幾つかの候補作品の中から今年度の研究対象作家・作品を絞り込み、それらについて紹介・考察・論文化を図る。また、集め得た原本資料の書誌的データをパソコンに順次入力して、データベース化を図ることとする。因みに、現時点で予定している研究対象作家は、川合梁定であるが、研究の過程で変更は有り得る。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成23,24年度の主な研究費の使用は、研究対象となり得る原本資料とデータを入力するためのパソコン購入という物品費中心(文房具およびパソコン関連機器を含む)であったが、最終年度の平成25年度は、それらに加えて、持ち運び可能なパソコンの購入、地方大学図書館(同志社大学今出川文庫等)視察のための調査旅費、データベース化に関わる作業に際してのアルバイトに対する謝金、参考図書資料購入・複写代などに研究費を当てたく考えている。
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Research Products
(3 results)