2013 Fiscal Year Annual Research Report
明治二十年前後におけるボール表紙本を中心とした埋没作家・作品の実証的研究
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23520244
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Research Institution | Seijo University |
Principal Investigator |
池田 一彦 成城大学, 文芸学部, 教授 (10184417)
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Keywords | ボール表紙本 / 埋没作家 / 埋没作品 / 明治文学 |
Research Abstract |
明治初期・中期の文学史から洩れている、今日では忘れ去られたり埋没したりしている作家や作品について、明治二十年前後のボール表紙本を中心に発掘し、実証的に再検討するというのが本課題の目指すところであるが、先ずは南柯堂夢笑道人・萩倉耕造のような今では全く知られていない作家とその作品(『決闘状』)を主な対象として扱ってきた。 平成25年度は、戦前の柳田泉の文学史的記述等に総括的な成果は見られるものの、その実、文学的な研究対象として取り上げられることの少なかった高瀬真卿とその作品を取り上げることとした。菊亭静を始めとして数多くの筆名を持つ高瀬真卿の文学的著述家としての最たる特徴としては、明治十六年に一挙に二十三冊もの著作物を世に公けにしたということがある。それらを収集、読み込んだ上で、この度は、従来ほとんど触れられることが無かったが社会風刺戯作として一顧の価値ありと認められる『滑稽新話明治流行嘘八百』を取り上げ、検証することとした。書物としては、明治十六年に績文舎より二冊の仮綴本として出版され、二十二年に安井文欽堂より同じ仮綴本ながら一冊にまとめられた物が出版、二十四年に瀬山佐吉により原版人不詳としてボール表紙本化した一本が発行された。これら三種の本の書誌的事項から内容紹介・考察までを論文化した。特に、ボール表紙本化した瀬山佐吉版に至っては、書名を『人間万事嘘の世の中』と改められて著者名を削られた、一種の海賊版と言ってよい物であった。内容は、近世以来の穿ちの文学の流れを引いたもので、明治流行の人物・組織の裏面を作者の体験・教養を活かして抉った作品であった。これからも、より多くの埋没作家・作品を発掘・再検討する作業は続けて行く予定である。なお、アルバイトを用いて収集した書物の一部について書誌的事項を中心としたデータベース化を行ったが、これについても今後の継続的作業とする予定である。
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Research Products
(1 results)