2011 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23520249
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Research Institution | Meiji University |
Principal Investigator |
袴田 光康 明治大学, 文学部, 講師 (90552729)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
金 任仲 明治大学, 文学部, 講師 (30599577)
堂野前 彰子 (岡本 彰子) 明治大学, 文学部, 講師 (50588770)
木村 淳也 明治大学, 公私立大学の部局等, 研究員 (40614772)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 国際情報交流 / 韓国 / 三国遺事 / 漢文説話 / 神仏習合 / 東アジア / 説話文学 / 比較文学 |
Research Abstract |
平成23年度の本研究は、主に『三国遺事』の研究グループの研究活動を核として、韓国の研究者との情報交換や共同研究の準備を進めてきた。韓国研究者側の事情やメール連絡の不備などもあり、当初に予定していたように、韓国側に研究チームを立ち上げて、共同で『三国遺事』の校勘を行う計画は困難となったが、韓国研究者の助言や情報提供によって、既刊の影印本や校勘研究書を用いて、日本側で独自に検証を加えながら、本文の校訂作業を行える体制が整い、研究会の場で校勘作業を進めている。 また、こうした本研究への取り組みに理解を示してくれた韓国研究者との間に、シンポジウムの開催や論文集の出版を共同で行う計画が進行している。当初の研究計画では、本文校勘のレベルを研究対象にする予定であったが、こうした状況の変化に伴い、次年度以降においては、『三国遺事』の研究分野に重点を置き、注釈や論考を含む形で研究成果を発表して行く方針に切り替える。なお、『遺老説伝』を中心とする琉球研究のグループでは、先島地方の「旧記」類に研究対象を絞り、本年度は主に「宮古島旧記」類の文献調査と資料整理を行った。その成果の一部は、すでに論文等に発表されているが、近々、ホーム・ページにおいても公開をしていく。 具体的な実績としては、以下の9項目で成果をあげることができた。(1)『三国遺事』研究論文リストの作成、(2)『三国遺事』仏教用語集のためのデータ作成、(3)『三国遺事』巻2紀異第二の校勘、(4)韓国言語文学文化国際学術大会(於韓国延世大学)への参加と研究発表、(5)『淵民学志』第17輯(韓国淵民学会)における特集「新羅と日本の説話」(掲載論文3本)、(6)『宮古島旧記』類の所蔵調査、(7)旧記資料の分析と翻刻、(8)『遺老説伝』に関する注釈と論文などの発表、(9)『遺老説伝』と『扶桑略記』の仏教用語集のためのデータ作成などである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
初年度研究計画からの遅れが著しいのは、(1)『三国遺事』の校勘・校訂作業、(2)「東アジア仏教用語集」のデータ・ベース化、(3)研究成果を公表するホーム・ページの開設、という三点であるが、これらは研究の方法として連動する性質のものであった。 本研究の課題遂行にあたり、当初予定をしていた韓国研究者チームが発足できず、研究方針の変更や資料の入手などに時間を要した。このため、当初、初年度に巻1・2を終了する予定であった校勘作業は、計画よりも立ち遅れ、巻2のみという結果となった。この校勘作業の遅れが、全体的な研究の遅滞をもたらすことになった。校勘作業の遅れによって、本文の校訂作業も遅れ、これと連動する形で、校訂本文に基づく仏教用語の検索も遅れることになった。本文が確定しないために、データ収集やその整理方法の基準設定に試行錯誤し、実際の作業がが大幅に遅れたのである。その結果、ホーム・ページの主要なコンテンツである「東アジア仏教用語集」のデータ・ベース化が進まず、ホーム・ページの年度内の開設も見送ったものである。現在は、校訂作業と切り離す形で、「仏教用語集」のデータ・ベース化を進めている。ホーム・ページは次年度の早いうち立ち上げ、随時、データを更新・追加していく予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の研究の推進状況を踏まえ、最も大きな成果が期待される『三国遺事』の日韓共同研究の分野に研究の重点を置くことにする。ただし、当初の研究計画では、『三国遺事』の本文研究を共同で進めていく予定であったが、韓国の研究者の関心が、韓国ではすでに整備されている本文研究よりも、むしろ、説話の解釈や受容の問題にあることも判明したので、本文研究は韓国の研究成果を検証する形で日本側で独自に進め、解釈や受容の問題に関する論文や研究発表の場を通じて、共同研究を推進していく方針へと切り替える。 これに伴って、本研究の『三国遺事』の研究会においても、これまでは訓読と諸本の校異調査を中心に行ってきたが、加えて、注釈や考察を付加していく形に改める。注釈や考察においては、先行研究として三品彰英氏の『三国遺事考証』が一つの指標となるが、韓国の最新の研究による注釈や解釈との比較検討を通して、三品『考証』を超える、新たな解釈の提起を目指していきたい。この新たな解釈については、東アジアの共通文化圏という構想からアプローチしていく方針である。『遺老説伝』や『扶桑略記』との比較研究も、その中に織り込む形で成果としてまとめていくことになる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度以降、『三国遺事』の研究分野に重点を置くことにより、韓国への海外出張の機会が増えることが見込まれ、そのための旅費を確保することが必要となる。また、韓国語の論文や注釈の翻訳も、重点的に進める必要があり、次年度は翻訳料も研究費使用において多くの割合を占めることになる。また、本年度、達成することができなかったデータ・ベース作成とホーム・ページの開設は、急務の推進目標であり、このための謝金などにも費用を割り当てたい。このため、次年度では、図書などの物品購入は極力抑えて、上記のように、旅費(韓国出張)、翻訳(論文・注釈書の日本語訳)、謝金等(データ・ベース化補助作業・ホームページ作成補助作業)などの項目にに重点的に研究費を使用していく計画である。
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Research Products
(20 results)