2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23520249
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
袴田 光康 静岡大学, 人文社会科学部, 准教授 (90552729)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
金 任仲 明治大学, 文学部, 講師 (30599577)
堂野前 彰子(岡本彰子) 明治大学, 文学部, 講師 (50588770)
木村 淳也 明治大学, 知財戦略機構, 研究員 (40614772)
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Keywords | 三国遺事 / 仏教説話 / 神仏習合 / 国際情報交換 / 韓国 |
Research Abstract |
本年度は、『扶桑略記』(日本)、『三国遺事』(韓国)、『遺老説伝』(琉球)の三本の研究テーマのうち、最も成果の期待できる『三国遺事』の分野に重点を置いて研究を実施した。すでに前年度より、『三国遺事』本文の校異作業を進めてきたが、本年度は巻2の校合調査・本文校訂の作業を引き続き継続するとともに、巻1の校合作業にも着手した。しかし、巻1に関しては、校合に用いる古刊本の入手が遅れため、天理大学本(底本)、蓬左文庫本、ソウル大学本との校合にとどまった。 また、これと並行して、韓国延世大学の許敬震先生を中心とする韓国の研究者と交流の場を持ち、『三国遺事』をテーマとした日韓共同の論文集の企画を推進した。韓国側から7名、日本側からは本課題研究の研究代表者、研究分担者を含む6名の執筆者が決定し、平成24年3月に入校の予定であったが、翻訳作業の遅れなどが生じ、5月に締め切りを延期する運びとなった。同論集は雑誌の形での出版を予定しており、これは、当初の研究計画において最終年度に計画していた「東アジア研究論集」に代わって、本課題の研究成果を一般社会に還元する役割を果たすものである。 さらに、本年度は、「東アジア仏教用語集」の基礎データの完成をみた。この基礎データは、仏教関係の用語100語を、『扶桑略記』、『三国遺事』、『遺老説伝』の三つのテキストから抽出し、その用例をデータ・ベース化したものである。この基礎データをもとに「東アジア仏教用語集」の作成を進めており、平成25年度内にWEB上で公開することを目指している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
三か年の事業期間のうち、本年度はその中間に当たる。本来は、研究計画の60~70%程度が達成されていなければならないが、校合作業、検証作業、データベース化作業などのさまざまな面で遅れが目立ち、当初の研究計画の50%程度の達成度に留まっている。特に、日本・琉球・韓国などのそれぞれの分野の研究を比較し、東アジアの神仏習合を総合的に研究する課題は、本研究の中心的テーマであるにも関わらず、十分に展開できているとは言えない。その大きな原因は、研究代表者の所属機関の移動によって、琉球研究やフィールド調査などの各分野との連携が希薄化したことにある。『三国遺事』の研究は、月に一度の研究会を継続し、「紀異」篇については、研究をまとめる段階に達している。また、『三国遺事』の研究を通して、韓国の研究者らとも学術的な情報交換を行い、さらなる研究のステップも準備されつつある。しかし、『遺老説伝』を中心とした琉球の神仏習合の研究やフィールド調査などの面では、それぞれの研究分担者に任せきりになってしまい、分担者間で相互に研究成果をフィードバックし合う機会が著しく減少してしまった。こうした状況の変化を省みて、本年度は、最も研究成果が期待できる『三国遺事』の研究分野に重点を置く形にシフトしたが、『三国遺事』の校合作業も大きく遅れており、作業のやり方に工夫と改善が必要である。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の研究計画が遅れていることを考慮し、実施期間の最終年に当たる平成25年度は、すでに本研究課題において重点化している『三国遺事』の研究分野の中でも、特に巻1・2の「紀異」篇に研究対象を絞り、「紀異」篇の校合作業と注釈作業を中心に研究成果をまとめる方針である。これまでは、校本の不備や校異方針の不統一などもあって、試行錯誤が続き、作業全体が遅れてきたが、そうした問題は巻1・2に関しては改善されている。今後は、巻1・2に範囲を限定して、定例の『三国遺事』研究会で集中的に校合と注釈の研究報告を実施していく。9月を目途にまとめの作業に入り、研究成果をホーム・ページで公開するとともに、その成果の一部は本の形にまとめて出版する計画である。成果発表の場が用意されることで、各担当者のモチベーションも高くなることが期待される。9月以降は、各研究分担者に研究報告書の作成を進めてもらうい、最終的には、12月に「東アジアの神仏習合」というテーマで本研究を総括する研究発表会を開く予定である。なお、9月の段階で校異や注釈が完成しなかったものについては、『三国遺事』巻3~5の残りの部分とともに、継続課題として平成25年度以降も、助成金の有無に関わりなく取り組んでいく方針である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度は研究実施期間の最終年度に当たるので、研究成果のまとめとその公開が中心となる。そのため、研究費の使用も研究成果の発表に重点を置く計画である。その主なものはホーム・ページの開設と研究報告書の作成である。ホーム・ページの開設は、コンテンツが不十分であったため、これまで延び延びになって来てしまったが、夏までに開設し、9月以降、成果を順次アップしていく。このホーム・ページの作成に20万円程度の費用を見込んでいる。また、2月までに本研究の研究報告書をまとめる予定であるが、その印刷費等に20万円を充てる。研究のまとめに伴い、韓国の文献の翻訳やデータの入力作業なども増加することが見込まれるが、入力などは研究代表者が直接行うなどして、この方面の支出は極力抑え、その分、研究成果の発表に関連する費用に充てる方針である。なお、12月に総括的な研究報告会の開催を計画しているが、これについては、当初の計画では韓国の研究者らを招聘することも考えていたが、研究費の残高に応じて規模を調整して実施したいと考えている。
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Research Products
(11 results)