2013 Fiscal Year Annual Research Report
ニュージーランド文学におけるポストコロニアル・アイデンティティの形成
Project/Area Number |
23520276
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Research Institution | Hirosaki University |
Principal Investigator |
澤田 真一 弘前大学, 人文学部, 准教授 (30250624)
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Keywords | 英語圏文学 / ニュージーランド |
Research Abstract |
研究の最終年度は、初年度にニュージーランドで収集した資料、データを利用した研究を国内で行った。 植民地主義の差別と抑圧を体験してきたマオリ作家が、キリスト教西洋の価値観とマオリの価値観を弁証法的に発展させることによってつむぎだしてきた、新たな共生の思想を、3年にわたる研究の帰結として提示した。ウイティ・イヒマエラによって代表されるマオリ作家たちは、自分の生まれついたエスニシティを、思索のための一つの貴重な資源として捉え返す。前近代的であるとして軽んじられ、否定され、周縁に追いやられてきたマオリ文化を、西洋文化の前で拒絶してしまうのではなく、脱植民地化という自己と民族の解放運動の中で、差別を再生産することのないより洗練されたものとして取り戻そうとする。彼らは過去の最文脈化、再解釈という手法によって、神話・伝統に新たな意味を与え、そこからより高次の調和を導き出そうと試みる。新たな調和の上に民族としての真の主体性を確立したときに、マオリ文化は白人文化に抗するアンチテーゼとしての主体の位置を獲得し、二項対立の構造を二文化共生に作り変えていくことが可能になる。 最終年度に実施した研究の成果は以下のとおりである。 ・研究発表:「ニュージーランド文学におけるポストコロニアル・アイデンティティの形成」日本ニュージーランド学会第68回研究会、東京外国語大学、2014年3月1日 ・論文:「ニュージーランド文学におけるポストコロニアル・アイデンティティの形成:より高次の調和を求めてのIhimaeraによる脱植民地化の過程」日本ニュージーランド学会誌第21号に掲載予定(査読審査済み)、2014年
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