2012 Fiscal Year Research-status Report
冷戦期における合衆国ナショナリズムとソフト・パワーとしての表象文化の研究
Project/Area Number |
23520279
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Research Institution | Akita University |
Principal Investigator |
村上 東 秋田大学, 教育文化学部, 教授 (80143072)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大田 信良 東京学芸大学, 教育学部, 教授 (90233139)
塚田 幸光 関西学院大学, 法学部, 教授 (40513908)
中山 悟視 海上保安大学校(国際海洋政策研究センター), その他部局等, 准教授 (40390405)
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Keywords | アメリカ合衆国 / 国際情報交換 |
Research Abstract |
刊行が大幅に遅れていた論文集『冷戦とアメリカ 覇権国家を支えた文化装置』の編集作業が現在ようやく最終段階を迎えている。小説の分野は去年の遅れを取り戻すに至っていないが、進展はそれぞれの分野で確認できる。 大田を中心とした批評の分野は、英米両国にまたがる問題像を掘り下げ、彼本来の研究領域である英国の文化・社会と合州国との関連を浮き彫りにすべく作業を続け、『イギリス映画と文化政策』(慶應義塾大学出版会)を刊行している。英米両国にまたがる問題とはいえ、それぞれの社会固有のナショナリズムと批評の関係についてある程度深い把握が必要だが、以前彼が刊行した『ポスト・ヘリテージ映画』と併せ、合州国のナショナリズムを考えるうえでの準備がほぼ整ったと考えられる。 映画の分野では、塚田がヘミングウェイを中心として考察を進めており、今後は50年代、60年代へと順調に研究の深化が進めば、『冷戦とアメリカ』の次に複数の人間で取り組むべき課題が明確な形をなすと思われる。 小説の分野は一番遅れているとはいえ、中山が大きく関わった『カート・ヴォネガット』が出版されている。これは従来サブ・カルチャーの一部と見做されがちだったヴォネガットを冷戦期の古典的な存在と位置づける労作であり、同時代・同系統の作家へ研究を進める際にベース・キャンプの機能を果たすことが期待できる内容を持つ。 冷戦時代が現代に与えた影響を知るうえで意義のある<オキュパイ・ウオールストリート>等の周辺調査は今年度行うが、それらによって、合州国文化が持つソフト・パワーの性格を、少なくとも輪郭だけは正確に描き出す作業が、与えられた3年の間に完結する見通しがあり、全精力を傾けて研究に尽力したい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
刊行が遅れていることを除けば、論集『冷戦とアメリカ』は原稿も出揃っており、最終的な編集作業を残すのみとなっている。また、昨年の日本アメリカ文学会全国大会でトルーマン・カポーティに関し注目すべき発表をした若手研究者の論文を追加できることとなったのは、収穫である。 ソフト・パワーの概念を縦糸とし、日米関係と私たち日本における研究の在り方を横糸とするかたちで、現在まで取り組んだ、取り組み続けている複数の問題群をまとめる時期に来たと認識できるので、「おおむね順調」と考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
論集『冷戦とアメリカ』をこの秋には刊行する。そして、次の論集の企画(映画を中心としたものが構想されている)を具体化すると同時に、日本アメリカ文学会全国大会ないしは日本英文学会の大会でシンポジアムを組むことで、私たちの問題意識と成果を関連分野の研究者に問い、同時に新しい研究仲間を募っていくことが賢明だと考えられる。 日本における研究の在り方へと波及するかたちで仕事をまとめ、問題提起の意義を確認し、併せて今後の展望ならびに課題を明確にしてゆきたい。その際、この4人がまだ充分に研究を進めていない作品・作家にどう取り組むかの見極めが肝心であろうと考えている。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
中山、村上は合州国への実地調査を予定している。今までに積み上げた仮説群の検証作業に力を入れる、と同時に、正確で中身の濃い研究を目指し、入念な情報収集に基き、研究費を使ってゆきたい。
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Research Products
(11 results)