2011 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23520283
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
浜名 恵美 筑波大学, 人文社会系, 教授 (20149355)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
近藤 弘幸 東京学芸大学, 人文社会科学系, 准教授 (00302901)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 国際研究者招聘 / 異文化理解 / 世界シェイクスピア上演 / 上演研究 / パフォーマンス / 文化交流 |
Research Abstract |
浜名は、8月に『文化と文化をつなぐ:シェイクスピアからアジア現代演劇まで(仮題)』の原稿を完成した。9月に筑波大学出版会に出版企画提案書を提出し、審査を経て採用され、平成24年7月に出版予定となった。あわせて、世界シェイクスピア上演、演劇理論、異文化理解教育を重点的に検討するために、文献調査とデジタルアーカイブの分析を開始した。7月は、第8回世界シェイクスピア会議(プラハ)の"World Shakespeares"のセミナーで発表を行い、成果を問うとともに、平成25年度開催予定の国際会議のためにも、海外の研究者との関係を強化した。発表原稿は、平成24年秋に刊行予定のスペインのアリカンテ大学紀要の特集号に掲載予定である。8月下旬に富山県の利賀で開催されるSCOT SUMMER FESTIVALに出張し、世界的に著名な異文化演劇の先駆者の一人である演出家・鈴木忠志の最新の演出と思想を調査した。当初予定していたドイツへの出張は予算と時間の関係で実現しなかったが、シェイクスピア演劇の上演を実地調査し、最新の動向の一端を分析し、異文化理解に資するシェイクスピア演劇の上演のあり方について考察することはできた。平成22年度にインドで開催された国際シェイクスピア学会の発表原稿を英語のレポートとして出版した。 近藤は、第50回日本シェイクスピア学会(平成23年10月)において、「シェイクスピアを教える」というセミナーのコーディネイターを務め、シェイクスピアを教えることの困難、工夫、意義等について、若手・中堅研究者たちと検討した。また、共著『今を生きるシェイクスピア』を出版し、明治期日本の『お気に召すまま』翻案小説のテクスト分析を行った。日本におけるシェイクスピア受容の諸相の検討が役割分担上効果的であると判断し海外出張はしなかったが、明治翻訳文学全集を購入し、翻訳・翻案研究を推進した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成23年度に関しては、平成23年3月11日大震災の影響で、科研費の配分も遅れ、また一時は研究どころではない状況であった。それを考えれば、全体としておおむね順調に進展していると評価できる。 浜名の平成23年度前半の最大の課題は本研究課題に関わる著書の出版であった。出版が当初の予定の平成23年秋から平成24年7月に延びた点は計画通りに進まなかったとはいえ、社会的に信用のある筑波大学出版会から出版されることになったことは高く評価してよいと思われる。また、第8回世界シェイクスピア会議のセミナーで一部を発表した論文の全体が、スペインのアリカンテ大学紀要に掲載されることになったことも、研究の国際化と海外発信の点で評価に値する。さらに、日本語と英語によるホームページの維持更新、異文化演劇作品の分析と英語論文執筆の準備、平成25年度開催予定の国際会議の立案にも取り組んでいる。 近藤は、第50回日本シェイクスピア学会(平成23年10月)において、本研究課題に関係する「シェイクスピアを教える」というセミナーのコーディネイターを務め、シェイクスピア研究者の関心を高めた。また、共著『今を生きるシェイクスピア』の出版し、明治期の翻訳・翻案研究を推進することをとおして、本研究の歴史的パースペクティブを深化・拡大することに貢献した。
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Strategy for Future Research Activity |
(浜名は、まったく予定外の事実として、平成23年8月に筑波大学・外国語センター長に就任し激務に追われているために、研究時間を確保することが至難となっている。)しかし、平成25年度10月に開催される日本シェイクスピア学会にあわせて、「世界シェイクスピア上演をとおして異文化理解教育」の国際会議を開催することができるように準備を進める。平成24年8月頃には、構想を決定し、関係者と連絡・交渉を開始する予定である。また、本研究課題を申請した平成22年には詳細不明であったが、その後平成24年のロンドン・オリンピックに合わせて、シェイクスピア・オリンピックとも呼ばれる一連の国際シェイクスピア祭や学会がイギリスで開催されることになった。その中のひとつである、グローブ座のGlobe to Globe祭では、シェイクスピア全作品を世界各地の劇団が37言語で上演する。繁忙期であるために1週間程度しか出張することができないが、『冬物語』(ヨルバ語)、『じゃじゃ馬馴らし』(ウルドゥー語)、『アントニーとクレオパトラ』(トルコ語)、『ヴェニスの商人』(ヘブライ語)、『間違いの喜劇』(ペルシャ語)などを見る意義は、本研究を推進するためにきわめて大きい。 近藤は、引き続き、世界シェイクスピア上演の翻案・翻訳研究のケース・スタディとして、明治期の日本において新聞連載小説として執筆され発表された作品を当時の文脈において分析し、その成果を論文として公開する。それとともに、現代における多様なシェイクスピア受容(上演、翻案、翻訳等)についてさらに広範に資料の収集とその分析を行う。また、国際シンポジウム開催準備の支援として、国内関連異分野研究者(ドイツ演劇、応用演劇、アメリカ演劇など)の協力を打診するほか、演劇関係者の招聘も検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
浜名の平成24年度研究費84万円(+繰越17.6万円)の使用計画:繰越176,385円が生じた理由:平成23年12月末に筑波大学出版会を通して丸善の関連会社に演劇写真掲載許諾取得作業を依頼したが、当該作業は煩雑であり、平成23年度内に請求書を入手できなかった。このために、平成23年度の研究費から17.6万円を平成24年度に繰越して、演劇写真掲載許諾取得経費に使うこととした。 4月 2カ国語ホームページ維持更新費用 12万円;5月 演劇写真掲載許諾費用(丸善プラネット)17.6万円(平成23年度繰越金)不足分は教育研究費から支払う予定。大学出版会から出版していただくので自己負担金はないのだが、出版会と審査委員から強く要望されている演劇の写真使用許可に関する経費(合計30万円程度)は自己負担である。この写真掲載経費として、平成23年度繰越金17.6万円を支出する。;5月25日―6月2日 イギリス出張旅費(世界シェイクスピア祭、蜷川幸雄演出『シンベリン』バービカンセンター公演調査) 35万円;8月下旬 利賀フェスティバル出張旅費 5万円;10月 北京出張旅費(鈴木忠志演出『リア』公演調査)7万円;10月13-14日 秋田出張旅費 日本シェイクスピア学会 4.5万円;物品費(書籍・DVD等)10万円;謝金・人件費 5万円;その他(国際学会ポスター作成、文具等)5.5万円;合計84万円近藤の平成24年度の研究費36万円(+平成23年度繰越金9000円)の使用計画(平成23年度繰越金9000円):繰越金9000円が生じた理由:明治期の復刻文献資料は高額なものが多く、平成24年度に繰り越して、有効活用することとした。 物品費(特に明治期の文献等)30万円(+平成23年度繰越金9,000円);10月13-14日 秋田出張旅費 日本シェイクスピア学会 4.5万円;その他(文具等)1.5万円
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Research Products
(3 results)