2013 Fiscal Year Annual Research Report
『ハムレット』のテキストにおけるパッセージレベルの異同に関する研究
Project/Area Number |
23520288
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
辻 照彦 新潟大学, 人文社会・教育科学系, 准教授 (30197678)
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Keywords | シェイクスピア / ハムレット / テキスト問題 / First Quarto / Second Quarto / First Folio / 著者改訂説 |
Research Abstract |
本研究では、『ハムレット』のテキストにみられる異同のうち、Second QuartoのみにみられるQ2-only passageとFirst FolioのみにみられるF-only passageに焦点を当てて分析を続けてきた。最終年度には、3幕4場のクロゼット・シーンの最後にみられるQ2-only passageと、5幕2場のハムレットとホレイショーの会話の部分にみられるF-only passageを中心に分析した。5幕2場のF-only passageについては、Q2にみられる断絶の痕跡や、FにみられるF-only passageとその前後のテキスト間の緊密な連続性を分析することにより、F-only passageがFへの加筆ではなく、Q2の基になったマニュスクリプトに含まれていたパッセージが何らかの原因で欠落したものであることを明らかにした。また、3幕4場のQ2-only passageについては、原話の影響や、5幕2場にみられる親書書き換えの説明と比較しながら、作者シェイクスピア自身が意図的にこのパッセージを削除したことは考えにくいことを発表論文で論じた。 研究期間全体を通じて、『ハムレット』のSecond QuartoとFirst Folioの間にみられるパッセージレベルの異同についてはほぼ網羅的に分析した。その結果、代表的なF-only passageはすべてQ2の基になったマニュスクリプトにもともと含まれていた可能性が高いこと、そしてQ2-only passageをシェイクスピアが意図的に削除したとする仮説が説得的でないことを明らかにすることができ、それによりQ2をシェイクスピア自身がFのように意図的に改定したとする作者改訂説が『ハムレット』については成立しないという結論を導き出すことができた。
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Research Products
(2 results)