2014 Fiscal Year Research-status Report
シェイクスピア・フォリオの書き込みにみられる読者像
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23520333
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Research Institution | Meisei University |
Principal Investigator |
住本 規子 明星大学, 人文学部, 教授 (10247174)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2016-03-31
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Keywords | 国際研究者交流 / フランス / シェイクスピア / フォリオ / マージナリア / 読者論 |
Outline of Annual Research Achievements |
最終年度の26年度では、 (1)グラスゴー大学図書館でファースト・フォリオほか全4冊のフォリオ本を閲覧調査し、書き込みページを中心に撮影、画像データを得た。ファースト・フォリオの書き込みは同図書館のウェブサイトでその一部が公開されてはいるが、今回の調査で全体像がつかめたので、分析対象とすることが可能となった。この書き込みは17世紀前半のものと考えられ、1630年代頃と推定されている明星大学のMR774の書き込みを同時代の文脈からの相対化に役立つと思われるが、方法論として相対化の理論的枠組みが見つからず、分析は今後の課題とすることにした。 (2)ボドレー図書館所蔵のフォリオ本(Arch.Gc.9)のケース・スタディをパイロット的小論としてまとめ、日本ジョンソン協会『年報』(38号)で出版した。このケースでは18世紀初頭のシェイクスピア読者のテクストに対するニーズやシェイクスピア観についての先行研究(Robert D.Hume, "Before the Bard: 'Shakespeare' in Early Eighteenth-Century London."(1997))が提示する文化モデルを援用すると、書き込み行動のかなりの部分が説明解明されることがわかった。一方で、同じ文化モデルが資料を充分には見つけていない点を、読者の書き込みを資料とすることで実証可能であることもわかった。このことは、書き込み研究の重要な意義のひとつと見てよいだろう。 (3)MR774をトピックの中心に据えたアメリカ・シェイクスピア学会(2015年4月)におけるワークショップの運営(2014年5月から年度末にかけて)にJean-Christophe Mayer CNRS教授と共同で携わった。ワークショップ当日の参加者および聴衆からのフィードバックは、延長した次年度にフォリオの読者像という本課題のまとめに活かしたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
(1)書き込み転写結果を後続研究者が参照できるかたちに出版するためのフォーマットの完成に至らなかったこと (2)具体的な書き込みをめぐる意見交換の場をもつことができたがその学会開催日程が次年度はじめに設定されていたこと 以上(1)、(2)の理由で最終報告書の出版に至らなかったため、「遅れている」と評価する次第である。
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Strategy for Future Research Activity |
一年延長が承認されたことを受け、報告書の出版を次年度末に行いたい。
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Causes of Carryover |
研究成果を試す機会であると同時に専門的知見を得る機会でもあるアメリカ・シェイクスピア学会の開催時が次年度初頭に置かれたため予定した海外出張の実施と、研究のまとめとしての報告書作成に至らなかったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
アメリカ・シェイクスピア学会出張と2014年11月に発見されたファースト・フォリオの学会への出張に旅費としてあてる。 最終報告書の出版費用にあてる。
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