2011 Fiscal Year Research-status Report
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23520336
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
菅野 素子 早稲田大学, 文学学術院, 助手 (10586176)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | イングランドの状況 / ブリテンの状況 / 社会変動 / 経済状況 / イングランドの状況小説 / 多文化 |
Research Abstract |
平成23年度に実施した研究の成果は、以下のとおりである。1.新聞雑誌の記事検索および資料収集 「イングランドの状況」(the condition of England)という表現を含む、雑誌新聞の記事検索ならびに資料収集を行い、平成24年度に内容を詳細に分析すべき18件を抽出した。また、上記調査結果は、歴史的な文脈に位置づけてより長期的な視点から包括的にその意義や意味の変遷を検討すべきものである。このため「イングランドの状況」記事検索の対象期間を1801年以降に拡大すると共に「イングランドの状況」とは代替的に使用されることもある「ブリテンの状況」(the condition of Britain)、「南北分断」(north and south divide)をキーワードとした記事を調査し、270件余を来年度の分析対象として収集した。 2.小説のテクスト分析 本年度は、1975年から1979年にホイットブレッド賞およびブッカーの受賞作および最終候補作となった小説を調査し、1)政治経済的な「イングランドの状況」、および2)多文化化する「イングランドの状況」を示す小説の叙述を調査した。その結果、調査対象とした小説はオイルショック以降、英国が経済構造の変化や社会変動を経験する中で出版され、文学賞の候補となってある意味で時代を代表する作品ではあるが、イングランドもしくは英国国内の政治経済危機的状況を正面からとらえた作品は少なく、その舞台をアイルランドやヨーロッパ、米国などに設定しあるいは両者の国際関係に求める、いわゆる「インターナショナル」な小説が主流を占めていることが分かった。また、国内問題を扱う場合でも、中産階級を舞台とし、その家族関係や夫婦関係の問題を取り上げるものが主流であり、国内に抱える「多文化」の問題が、今回調査対象とした小説の言説の中に現れることは極めて稀であった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
新聞雑誌記事における言説分析に関しては、早稲田大学図書館における新たなデータベース導入により、キーワードの件数や調査対象媒体、さらには調査対象期間を補足することができ、内容的にも件数的にも計画していた以上の成果を出すことができた。 しかしながら、小説の調査に関しては、一部分析を来年に持ち越したものがある。テクストの入手に困難なものがあったためである。特に、ウィットブレッド賞の候補作のデータについては、授与団体が変更になったこともあって候補作情報の入手が難航しており、平成23年度は受賞作のみの調査を行った。 なお、本研究は新聞雑誌記事に言説化された「イングランドの状況」と小説に取り上げられた「イングランドの状況」の相関関係を検討するものであるが、新聞雑誌の内容分析は来年度に行う予定であるため、両者の関係の検討も本年度以降となる。
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Strategy for Future Research Activity |
基本的には当初の計画どおり推進する。 平成23年度に未使用金が発生したが、これは新聞雑誌記事調査にかかわる費用が計画よりも軽減できた反面、小説テクストの中には出版から30年以上経過して絶版となり入手が困難なものが多く、こうしたテクストはロンドン大学図書館および大英図書館にて調査を行う必要があったため、当初購入予定であったパソコンの購入を見合わせたためである。 ホイットブレッド賞の候補作リストが入手困難であるという問題への対応については、引き続き資料の獲得に努めると共に、代替策として、ホイットブレッド賞と同等の権威を持つサマーセット・モーム賞受賞作を合わせて調査対象としたい。 また、新聞雑誌記事における「イングランドの状況」の使用調査に関しては、対象期間を19世紀初頭以降今日までに拡大して研究を推進する方針としたい。これにより、「イングランドの状況」にまつわる一般的な用法と特定の用法が混在しながら存続してきた、その流れを探ることができると考えるためである。つまり、19世紀に特定の状況を示すものとして使用された用語は、時代の推移によってその意義を失う一方、時間が経つにつれてより一般的な文脈で使用されるようになったが、時代を超えて使用され続ける強みは、まさに特定の用法と一般的な用法が混在するためであり、調査対象期間を拡大することに、こうした流れをより広い視点から把握することができるものと考える。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当初計画どおりとする。 なお、平成23年度に未使用金として平成24年度に繰り越した資金は、入手が困難もしくは高価である小説テクストの入手費用に充当する予定である。
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Research Products
(1 results)