2011 Fiscal Year Research-status Report
虚構の現実、リアルなフィクション:英米文学と「親密さ」という現象に関する一考察
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23520345
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
若菜 マヤ 立命館大学, 国際関係学部, 教授 (80201143)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 日常性 / ミクロ社会学 / イーデス・ウォートン / ジェーン・オースティン / ヘンリー・ジェイムズ / ナサニエル・ホーソーン |
Research Abstract |
2011年度の研究活動は学会報告2件。1) 2011年4月7日~4月11日(開催地:米国、NJ州、ラトガーズ大学)第42回、Northeast MLA 学会、"Fashioning the Self in Wharton's *The Age of Innocence*"。2) 2011年7月7日~7月10日(開催地:伊、ローマ、John Cabot大学)第5回ヘンリー・ジェイムズ国際学会、"A Microsociological Analysis of Henry James's 'Paste' (1899)"。論文執筆、他では1)例年通り夏季の3週間、ヴァージニア州立大学で集中的に資料収集及び論文執筆及び研究者たちとの交流を行い、序章を執筆。研究者たちからフィードバックを。2)ヘンリー・ジェイムズ国際学会の組織者たちが中心になって編纂するアンソロジーの論文執筆。2011年12月末日提出。2012年4月に論文の採用及び出版社が見つかったとの通知を受ける。今後最終的な詰めの作業に。3)ウォートンの『イーサン・フロム』に関する論文を米国の学術出版社に年度末に送付。審査中。当該研究者は20世紀ミクロ社会学者のE.ゴッフマンの社会観、人間観を取り入れた文学論を展開し、「現実こそ虚構、文学はその現実の虚構性をこれまで考えられてきた以上に正確に映し出している」と主張。現在この研究の第二段階。日常生活のシナリオ性、演劇性についてはミクロ社会学者たちが既に主張してきているが、日常生活の文学性、文学のリアリティーを主張する為の裏付け深まる。2011年度は序章の執筆に専念した。最大の収穫は歴史学者のHayden Whiteや哲学のAlasdair MacIntyreらのナラティヴ(「語り」)と意味の関係についての論文であった。序章の執筆により、全体像がよりダイナミックに見えてきた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
行政の仕事の関係でこの3年間、夏の3週間しか連続して渡米することができなかった。3週間では若干時間が足らず、普段の生活に戻ると資料が入手しにくい状況が発生することも手伝って、中々夏季のように集中した形で研究が進められない。その代わり、小間切れの時間で進めることのできる他の研究活動は行った。ヘンリー・ジェイムズ国際学会の組織者たちが中心になって編纂するアンソロジーの呼びかけに従って論文を執筆し、2011年12月末日提出。この論文の採択及び出版社が決まった旨、2012年4月に伝えられる。これから最終の詰めの作業に入ることになる。さらに、ウォートンの『イーサン・フロム』論(次なる単著の中の一章になる予定)を米国の定評ある学術出版社に2012年3月中旬に審査の為、提出した。かなり難関だが、この審査に通れば、次なる単著の出版も少しは楽になると考えられる。なお、序章を執筆することにより、今後出版社に送付する出版計画書(book proposal)も一部「自動的に」書けたことになるので、遅れも大きくはないと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
2012年度は国際学会での学会報告を1回、生誕150周年記念にイタリアのフィレンツェで開催されるイーデス・ウォートン学会で行う。この学会での報告は初めてである。さらに、夏季の4週間(これまで3週間しか可能でなかったが今年は可能)をヴァージニア州立大学の大学図書館に赴き、これまで手付かずであったナサニエル・ホーソーンの『緋文字』論の資料収集及び論文執筆に取り掛かる。胸に緋色の"A"という文字をつけて登場するホーソーンのへスター・プリンはまさしくゴッフマンのミクロ社会学用語を使えば「烙印を押された者」のプロトタイプである。自然と社会、個人とアイデンティティー、表舞台と裏舞台、一体ミクロ社会学的な物の見方を作品分析に持ち込むとどのような様子が浮かび上がり、作品中の男女関係はどのような様相を呈するのかを分析する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
2012年度の研究計画は:1.学会報告1件: 昨年に学会報告を申請し、審査を通過。2012年6月6日~6月8日(開催地:伊、フィレンツェ、Marist大学)、A Sesquicentennial Conference Sponsored by the Edith Wharton Societyでの学会報告、"Everyday Aestheticism in Wharton's *Ethan Frome*"について行う。2. 論文執筆、他: 1)例年通り、夏季に今年は一カ月、ヴァージニア州立大学にて集中的に資料収集及び論文執筆及び研究者たちとの交流を行う。これまで書いてきたJane Austen, Henry James, Edith Whartonらの作品に関する未発表の論文及び昨年の夏に書き出した序章を突き合わせ、新たにNathaniel Hawthorneの作品論を加えることを決めたので、より一層、プロジェクト全体の具体的な輪郭を明確にしていきたい。2)2011年末にアンソロジー(ヘンリー・ジェイムズ国際学会)出版計画に論文を提出したが、このアンソロジーを出版してくれる出版社がみつかり、出版に向けての最終調整に入る。コピー・エディットに関わる費用が再度発生することが考えられる。3)2012年3月に審査の為提出した『イーサン・フロム』に関する論文も審査に通過した場合でも書き直し作業が考えられる。その場合、コピー・エディットに関わる費用が再度発生することが考えられる。
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Research Products
(2 results)