2012 Fiscal Year Research-status Report
虚構の現実、リアルなフィクション:英米文学と「親密さ」という現象に関する一考察
Project/Area Number |
23520345
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
若菜 マヤ 立命館大学, 国際関係学部, 教授 (80201143)
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Keywords | ミクロ社会学 / ヘンリー・ジェイムズ / ジェーン・オースティン / イーデス・ウォートン / ジョージ・エリオット / 対面行動 / 「顔」 / インティマシー(親密さ) |
Research Abstract |
当該研究者は毎年夏季に一か月、春に可能な限り3週間程度、あらゆる分野の洋書が揃い、他大学所蔵の研究書籍も取り寄せてくれる関係・研究環境にあるヴァージニア州立大学の図書館に籠り、他研究者との交流を行いつつ、集中的・飛躍的に研究を進めてきた。2012年度は: 1、以前書いたE. ウォートンの『無垢の時代』論を一章から二章の長さに延長し、資料収集・論文執筆を行う(結果、2章で計約19,500 words、引用文献一覧含まず)。この追加的作業は既に執筆した論文の分析の不十分な個所を充実させた為。 2、複数の研究者との懇談の結果、次回に取り上げる作家・作品を当初予定していたN.ホーソーンの『緋文字』でなく、G.エリオットの『フロッス湖畔の水車小屋』に変更することを決め、資料収集を行う。この作品の前半部分で主人公の子供時代が描かれ、人が社会化される過程の具体的な描写が豊富で、後半部分はまさしくintimaciesをテーマとしている点に注目した。 3、K. Chase, S. Arata, W. Jost, A. Boothらと懇談し、研究に関する情報交換及び上記2.についての相談を行い親交を深め、以前執筆した論文に関するフィードバックも得る。 その他:[学会報告1件、アンソロジーの中の論文1点の審査通過、出版確定。]1.2012年6月初旬開催のEdith Wharton 生誕150周年記念の国際学会(開催地:伊、フィレンツェ)にて学会報告を行う。初めてジェイムズ以外の作家についての国際学会報告を行う。2.2011年7月の国際ジェイムズ学会(開催地:ローマ)で発表した研究内容が評価され、*Transforming Henry James* (Cambridge Scholars, 2013)の中の一論文として審査を通過、採用が決まる。2013年5月に出版確定。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度は「やや遅れて」いた研究状況であった。これは当該研究者が取り組んでいる研究内容が1.先端的かつ学際的視点に立った研究である、2.複数の作家の非常に特徴的に異なった作品を取り上げている(新たに獲得しなければならない情報・知識が極めて多い)、3.研究を進めれば進めるほど新たな領域・要素が出てきて、一旦書き上がった論文もその新たな領域・要素を摂り込もうとすると大幅に加筆修正せざるを得なくなった。現在やっと落ち着くところに落ち着く。従って「概ね順調に進展している。」と言うのが現時点での自己評価となる。
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Strategy for Future Research Activity |
2013年度の具体的研究計画は: 1.学会報告1回:テーマの合うものがあり、かつ学会報告申請書が審査を通過して採用されれば行う。 2.資料収集、論文執筆、研究者との交流の為、ヴァージニア州立大学図書館へ出張:あらゆる分野の洋書が揃い、それらに自由にアクセスできる状況にあるヴァージニア州立大学の図書館への出張はジョージ・エリオットの『フロッス湖畔の水車小屋』論を2013年度内に書き上げる為には必要不可欠である。 この作品を分析する際、次の4点に焦点を絞る予定である:1、エリオットが調子に乗りすぎて長くなってしまった、とまで述べている作品の前半部分、つまり、主人公の子供時代を描いた部分、と大人になってからの主人公を巡る物語である後半部分、との有機的な関連性、2、音楽や歌うという行為の19世紀時点でのミクロ社会学的役割・意味の追求、3、この作品における登場人物たちの「顔」と彼らの間に生まれたり生まれなかったりする「親密性」との関係、4、主人公マギーの社会的失墜のメカニズム及び彼女が求めていたものの正体、である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究費の具体的使途は概ね次の三つである。1.ヴァージニア州立大学の図書館への夏季一カ月+αの出張旅費(資料収集、論文執筆、研究者との交流)、2.国際学会で一回、学会発表を行うのでこの為の出張旅費、3.これまで書いた論文で完成度の高いものを出版に向けてコピー・エデットに出す(人件費)。
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Research Products
(2 results)