2013 Fiscal Year Annual Research Report
戦間期の「多元的宇宙」―エルンスト・ブロッホのプロジェクト「遺産」と「異化」
Project/Area Number |
23520373
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
吉田 治代 新潟大学, 人文社会・教育科学系, 准教授 (70460011)
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Keywords | 国際情報交換 / 独文学 / 思想史 / 文化の遺産・記憶論 |
Research Abstract |
今年度は、まずドイツの「ブロッホ協会」から依頼をうけ、「日本におけるブロッホ受容」に関する研究を行った。これは本研究で当初予定していなかったものであるが、本研究によって実現したドイツのブロッホ研究との交流の一環でもあるため、引き受けた。1960年代より本格化する日本のブロッホ受容の歴史、最新の研究状況を調査することで、ブロッホの文化多元主義を主題とする本研究の意義や今後の研究の可能性を認識することができた。なお、この研究成果は、ブロッホ協会が発行する『ブロッホ年鑑』に掲載されることになっている(2013年秋の刊行予定であったが、現在大幅に刊行が遅延している状況である)。 また、ブロッホの〈遺産プロジェクト〉の要となる、「遺産」の概念について、さらに研究をすすめた。『この時代の遺産』でブロッホが強調するのは、後期資本主義文化の遺産を社会主義が相続する、という左翼的な観点である。しかし実際には、文化多元主義的な枠組みにおいて、ドイツというネイションの遺産が追求されていた、というのが本研究の仮説である。昨年までの研究により、「ドイツ文化の遺産相続」は、ブロッホ以前に、グスタフ・ランダウアーらユダヤ系ドイツ人によって試みられていたのではないか、という疑問が生じたため、今年度は、1900~1910年代の「文化シオニズム」における「遺産」観念の解明に取り組んだ。ランダウアーにおいて、「社会主義」の立場にありながら、フィヒテやアルントなど、「ドイツ民族主義」に属するとされる思想が積極的に取り込まれるという、後のブロッホに通じる遺産観念が生まれたことが明らかとなった。この成果を、論文「『1913年』のコメモレイション グスタフ・ランダウアーの視座」としてまとめた(2014年刊行予定の共編著『高橋輝暁先生退職記念論集』に収録予定)。
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Research Products
(3 results)