2013 Fiscal Year Research-status Report
ボヘミア文学史・民俗誌記述におけるローカリズムの位相
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23520379
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
三谷 研爾 大阪大学, 文学研究科, 教授 (80200046)
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Keywords | ボヘミア / 文学史記述 / 民俗誌 / 地域性 / 多言語 / アウグスト・ザウアー / アドルフ・ハウフェン |
Research Abstract |
本研究課題は、中欧の典型的な多言語・多民族地域だったボヘミアを対象とし、ナショナリズム対立がきわめて深刻化した1890年代~両大戦間期に、ドイツ系知識人によって蓄積された、この地域の文学史・民俗誌的な学術情報のディスクール分析をおこなうものである。 3年目にあたる本年度、研究代表者は前年度に収集した民俗学者アドルフ・ハウフェンの民俗学的著述の検討を中心に作業をすすめ、また研究協力者の中村真は別財源による海外調査と文献収集を推進した。それにより、アウグスト・ザウアーの文学史構想とハウフェンの民俗学構想の、ディスクールとしての相同性および相互補完性を確認した。とりわけ、Volkstum概念の無規定な共有が、彼らの研究プロジェクトの駆動源となっているというパラドキシカルな状況を明らかにすることができた点は、チェコ側における人文学の展開との関連をみていくうえで大きな成果である。研究代表者は、ベルリン国立図書館で追加的な資料調査をおこなったうえで、本研究課題によって得られたこの新たな知見と従来のカフカ研究の蓄積を総合し、単著『境界としてのテクスト』として発表した。 他方、研究代表者は本研究課題から派生した、ドイツにおける文学史構想の歴史的変遷過程と日本における文学史記述の成立との相関関係の問題にも取り組み、その成果をハイデルベルク大学での招待講演において発表した。 次年度は、ハプスブルク帝国における他の多言語・多民族地域の文学史記述との比較検証をも視野に収めながら、ボヘミア文学史・民俗誌記述の収集とその分析の作業を継続する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ボヘミア文学史・民俗誌資料の収集と分析は、おおむね予定どおり進行している。その成果を単著として発表することは、当初計画では予定されておらず、その点では計画を大きく越えた進捗を得られたと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は本研究課題の最終年度に当たるため、今年度に単著として発表した成果を補充するかたちで追加的な文献収集と現地調査を実施し、最終的な取りまとめをおこなう。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
海外資料調査実施にあたり、航空チケット代金などを別財源で充当することができたため。また研究協力者が、前年度から、自身が代表者となる研究課題によって科学研究費補助金の交付を受け、それを利用して海外調査をおこなうようになったため。 9月にドイツ、オーストリアの国立図書館、大学図書館において資料調査をおこなうとともに、博物館等において現地調査をおこなう。あわせて、旧ハプスブルク帝国領だったイタリア北部地域の博物館等における現地調査を追加する。また、関連文献のより包括的な収集作業を強化する。
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Research Products
(2 results)