2014 Fiscal Year Annual Research Report
ボヘミア文学史・民俗誌記述におけるローカリズムの位相
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23520379
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
三谷 研爾 大阪大学, 文学研究科, 教授 (80200046)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2015-03-31
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Keywords | ボヘミア / 文学史記述 / 民俗誌 / 多言語地域 / 多民族地域 / ザウアー / ハウフェン / ホスチンスキー |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題は、中欧の典型的な多言語・多民族地域だったボヘミアを対象とし、ドイツ人とチェコ人とのナショナリズム対立がきわめて深刻になった1890年代~両大戦間期に蓄積された、この地域の文学史・民族誌的な学術情報を、主としてドイツ語資料に対象にディスクール分析をおこなうものである。 最終年度にあたる本年度は、これまでの調査を補足するかたちでオーストリア国立図書館での追加的調査をおこなうとともに、同じくハプスブルク帝国領内にあって、イタリア人・スロヴェニア人・ドイツ人のナショナリズム対立で知られた都市トリエステを訪問し、同地の博物館、資料館を実見するとともに、市中心部を踏査してその複数文化的環境の痕跡のもつトポグラフィカルな意味を検討した。 また、研究協力者の中村真とともに、チェコ側における民俗学的思考の形成過程について検証をすすめた。具体的には、前年度までの主たる考察対象であったアウグスト・ザウアーならびにアドルフ・ハウフェンとおおむね活動時期を同じくする美学者オトカル・ホスチンスキーの民族芸術の関する著作に焦点を絞り、その論考『芸術と民族性』(1869)と『ボヘミア俗謡』(1906)を対比的に分析した。 以上の実地調査とテクスト分析の結果をふまえ、中村と共同執筆した論文において、チェコ側における民俗学的思考もまた多言語・多民族地域に特有の文化移動や文化転移を視野に収めながらも、他方で本質主義的な文化ナショナリズムに支えられて展開されたことを確認した。チェコ側でのこうした議論は、ザウアー/ハウフェンによるドイツ側の民俗学構想と言説的にシンメトリカルである一方、博覧会企画や博物館建設といった文化政策とも連動していたことも明らかにした。
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Research Products
(1 results)