2013 Fiscal Year Annual Research Report
メヒティルト・フォン・マクデブルク『神性の流れる光』の思想的、社会的背景について
Project/Area Number |
23520393
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Research Institution | Gakushuin University |
Principal Investigator |
狩野 智洋 学習院大学, 付置研究所, 教授 (90329003)
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Keywords | メヒティルト・フォン・マクデブルク / 神秘主義 / ベギン / 中世の宗教運動 / 煉獄 / オリゲネス / ベルナール・ド・クレルヴォー |
Research Abstract |
メヒティルト・フォン・マクデブルクの『神性の流れる光』の思想的背景を探るために、オリゲネスやグレゴリウス一世、ベルナール・ド・クレルヴォー等の『雅歌解釈』とを比較研究した。それによって、『神性の流れる光』の独自性がより明らかになると考えたためである。 「キリストの花嫁」を教会よりも、寧ろ個人の魂と見なす点に、オリゲネスとベルナール・ド・クレルヴォーの『神性の流れる光』に対する影響が認められるが、メヒティルトが彼らの著作から直接影響を受けたと言うよりは、既にこの考え方が広く流通しており、彼女も自然にその立場に立っていたと考える方が妥当であり、直接的な影響ではなく、間接的な影響を受けたと考えられる。 また、メヒティルトが前人の『雅歌解釈』の影響を受けているとは言っても、『雅歌』を独自に解釈しようとしたわけではなく、寧ろ「キリストの花嫁」としての個人の魂、個人の魂の神に対する愛、という考えに基づいて、メヒティルト自身の『雅歌』を書くことを当初の目的として、『神性の流れる光』を書き始めたのではないかと筆者は考えている。言い換えれば、『雅歌』の形式を利用して自らの神秘体験を表現しようと試みたのではないか、と考えている。 更に、ドミニコ会がメヒティルトとその属するベギン会を司牧していたため、その修道士の説教等を通じ、種々の影響を受けたことが指摘され、また、他の神秘主義者との関連性も指摘されているが、広範囲に及ぶため、今後も更に研究を進める予定である。 尚、これまでの研究成果は今後5回程度に分け、主に雑誌論文として発表し、最終的には一冊の本にまとめるつもりである。
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