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2015 Fiscal Year Annual Research Report

《感染》という表象の感染拡大に関する研究

Research Project

Project/Area Number 23520405
Research InstitutionWaseda University

Principal Investigator

神尾 達之  早稲田大学, 教育・総合科学学術院, 教授 (60152849)

Project Period (FY) 2011-04-28 – 2016-03-31
Keywords感染 / 表象 / ゾンビ / 微生物 / つながり / 絆 / ともだち
Outline of Annual Research Achievements

最終年度は、20世紀末から現在までを分析範囲とし、感染の表象が感染拡大する最新の形態を考察することを目的とした。小説、映画、マンガ等のフィクションを素材にして、同時代の集合的な無意識を触知するのが、研究方法である。この時期には実際にエイズ以外のパンデミックが次々に登場するとともに、「感染物」と呼ばれるフィクションが消費された。感染は身体だけでなく、恐怖の言説を媒介として拡大していった。世紀転換期のマンガでは、『蟲師』(1999-2008)や『もやしもん』(2004-2014)のように、ミクロな他者との共生が描かれ、同時期、ヒトの常在菌の有用性を説く啓蒙書もさかんに読まれるようになった。微生物をモティーフにした梨木香歩の『沼地のある森を抜けて』(2005)では、『ぐるりのこと』(2004)で提示された「群れへの回帰性と個への志向性のようなもの」が排除しあわない関係が描かれた。感染は「つながり」の表象に変異した。ただし、つながる「私」ではなく、つながりの中で自己定位する「私」という表象だ。「つながり」は2010年には「縁」(「無縁社会」)、2011年には「絆」と呼ばれるようになる。「つながり」が称揚された時期は、SNSが「つながり」の領域を爆発的に拡張した時期でもあった。「世界に一つだけの花」(2003)として咲くことを求められてもいた若者たちは、「ぼっち」ではない自分をSNSで確認するようになる。「つながり」は「ともだち」の表象に変異する。「ともだち」は計量と概観が可能な単位となり、主体は「ともだち」を管理しつつ、また管理されることになる。「ともだち」がデジタルな信号を経由した心と心の「つながり」だったとすれば、同じ頃、肉体と肉体の直接的な「つながり」がサブカルチャーのなかでさかんにとりあげられるようになる。ゾンビである。ゾンビはメタレベルから俯瞰的に自己定位することなく、感染し、つながる。これが現時点での感染の表象の到達点である。

  • Research Products

    (1 results)

All 2016

All Journal Article (1 results)

  • [Journal Article] つながりのつながり ―微生物、ともだち、ゾンビ―2016

    • Author(s)
      神尾達之
    • Journal Title

      早稲田大学 教育・総合科学学術院 学術研究(人文科学・社会科学編)

      Volume: 64 Pages: 241-260

URL: 

Published: 2017-01-06  

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