2011 Fiscal Year Research-status Report
フローベール『サラムボー』におけるファム・ファタル神話研究
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23520406
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Research Institution | Kanto Gakuin University |
Principal Investigator |
大鐘 敦子 関東学院大学, 法学部, 教授 (50350541)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 草稿研究 / フローベール / フランス文学 / 国際情報交換 / ファム・ファタル / サラムボー / 国際研究者交流 / フランス |
Research Abstract |
本年度は、『サラムボー』が近代的女性像の萌芽と形成に果たした役割を考察するために、まず『サラムボー』の膨大な草稿群がどのような状態でフランス国立図書館に保存されているか確認した。またフランス国立科学研究所へ赴き、パリ国立図書館でそれらの自筆草稿の調査と解読を開始して、注釈と転記を添えた論文を大学紀要に掲載した。『カルタゴ紀行』については、パリ市歴史図書館に保存されたカルタゴ旅行手帳の全ページを調査し、これまでに公開された転記と照合し異同を確認した。 2012年3月にリヨン国立科学研究所および高等師範学校で開催されたフローベールの「読書ノート」電子エディション化国際プロジェクト完成の国際会議では、宗教に関する「読書ノート」の中から19世紀のマリア巡礼ブームと国家や政治とのかかわりについて発表を行った。このシンポジウムは今後フランスで出版される予定である。 研究成果としては、同作家の創作したファム・ファタルの代表である「サロメ」のダンスと「サラムボー」の相関関係を読み解く必要性から、その第一段階として「サロメ形成神話」に関する論文を2011年12月、フランスの19世紀文芸批評誌Romantismeに発表した(査読論文)。 本研究を深めるために、プレイアッド版『サラムボー』新校訂批評版の校訂者の一人、ジゼル・セジャンジェール女史を本学キャンパスに招き、初期作品から『サラムボー』までのファム・ファタルの流れを総括し、当時の精神医学の影響について講演していただいた上で、テーマのひとつである女神像に付随するライオンの表象について、主催者とディスカッションを繰り広げた。(Salammbo et les mythes. Une figure de femme fatale- entre mysticisme et erotisme)聴衆は120名に上り盛況であった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでの草稿研究における未転記の箇所の割り出しができたことで、本研究のための転記作業を順調に開始できた。また校訂批評者が丁度来日していたことから、はやくも本研究について情報交換のための講演会や議論を重ねる機会を得たことは当初の計画以上に順調に進展したといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、転記作業とその分析に取り組む予定である。また、文献学的にも資料の組み込み方法について考察を重ねたい。そのうえで、文献学および生成論を順次発表していく予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
昨年秋に招聘予定で予算を計上したが、先方大学との日程が合わず、招聘のための予算分を繰り越した。そこで、本年度春に申請書に基づき、新プレイアッド版共同校訂者の一人であるルーアン大学フローベール研究所長を日本に招聘し、別視点から、本研究に関する研究者集会とディスカッションを含む講演会をする予定である。フランスでは、今回まだ150周年記念行事は行われる予定がないことから、貴重な機会になるといえる。また関係個所について、マイクロフィルムを購入し、分類の問題について検討を開始するため、国際情報交換を積極的に行う。本年度、招聘した講演会の成果も取り入れた論文をまとめる予定である。
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Research Products
(3 results)