2013 Fiscal Year Research-status Report
20世紀初頭の英語圏における日本演劇の上演と相互交渉の調査―郡虎彦と菊池寛を軸に
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23520427
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Research Institution | Fukuoka Women's University |
Principal Investigator |
鈴木 暁世 福岡女子大学, 国際文理学部, 講師 (60432530)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
橋本 順光 大阪大学, 文学研究科, 准教授 (80334613)
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Keywords | 国際情報交換 / 日本近代文学 / 比較文学 / 演劇 / 翻訳 / ジャポニスム / アイルランド |
Research Abstract |
本年度は、前年度までに実施したイギリス及びアイルランドにおける調査で収集した資料及び研究成果を整理・検討し、研究代表者と研究分担者が、各々著書及び論文、口頭発表の形で研究成果の発表を行った。その実績の概要は以下の点に集約できる。 【1. 資料の収集・整理と検討】a)菊池寛The Housetop Madman上演時のIrish Times掲載の劇評の発掘と検討。b)九州大学付属図書館蔵郡虎彦旧蔵書調査及び郡虎彦英文戯曲及び評論への影響の検討。c)郡虎彦「鉄輪」のロンドン上演時の劇評の収集・整理と書簡の翻刻。d)郡虎彦「鉄輪」を上演したエディス・クレイグ「パイオニア・プレイヤーズ」の活動調査。e)エレン・テリー、エディス・クレイグらによる女性参政権運動の調査と整理。 【2. 研究成果の発表】A)著書 鈴木暁世(代表)単著『越境する想像力』(大阪大学出版会、2014.2.28、426頁)、B)学術論文・その他(1)鈴木暁世(代表)「日本近代文学におけるアイルランド文学受容―翻訳と紹介記事をめぐって―」(2)橋本順光(分担)「初恋小説の系譜」(『産経新聞』関西版、2013.8.22、p.1)(3)同「宝探しと『ワンピース』」(『産経新聞』関西版、2014.1.30、p.1)(4)同「魂の入れ替わりと『秘密』」(『産経新聞』関西版、2013.2.27、p.1)、C)口頭発表(1)鈴木暁世「海を越えた戯曲」(2)同「郡虎彦の海外戦略―その背景と評価をめぐって―」(3)橋本順光「欧州航路と異文化交流 大英帝国・横浜・『風土』」(4)同「さがしものは見つかりません! 泉鏡花の「金時計」からクールボの「七つのダイヤモンド」までの宝探しの系譜」。 【3. 関連書籍の購入】日本におけるアイルランド演劇の受容と相互交渉、英語圏における日本演劇の上演に関わる資料及びジャポニスム関係文献を購入した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
(1)研究成果の発表として、鈴木暁世(代表)は、23年度から25年度に実施した研究成果を単著『越境する想像力 日本近代文学とアイルランド』(大阪大学出版会、2014.2、pp.1-426)として刊行した。本書では、ダブリン・ロンドンにおける資料収集・調査、関連分野の研究者との国際情報交流の成果であるイギリス及びアイルランドにおける日本演劇の受容と相互交渉の実態を、菊池寛と郡虎彦関係の新発見資料を用いて明らかにした。 (2)口頭発表「海を越えた戯曲」(福岡女子大学国文学会大会、2013年7月6日)、国際的な研究成果発表として「郡虎彦の海外戦略―その背景と評価をめぐって―」(国際研究集会「日本近代文学のインターフェイス」、2013年12月1日)等で研究成果を発表をした。専門家らと意見交換・議論を行い、研究の視野を広げることが出来たほか、次年度のシンポジウム開催の具体的な計画(2014年9月26日、於・大阪大学)準備のための研究打合せを行った。 (3)前年度に行った口頭発表「日本近代文学におけるアイルランド文学受容―翻訳と紹介記事をめぐって―」(2013年3月23日)を論文「日本近代文学におけるアイルランド文学受容―翻訳と紹介記事をめぐって―」(『エール』33号、日本アイルランド協会、2014年3月)として発表した。 (4)科学研究費補助金を利用し、日本におけるアイルランド演劇受容と相互交渉に関する資料や研究書、英語圏におけるジャポニスム関係図書を購入した。本年度は特に、著書刊行による研究成果の公表のために、研究補助者による効率的な資料整理を実施した。 (5)日本近現代における日本とアイルランドの相互交渉の調査のため、当該分野の第一人者井村君江氏に研究インタビューを実施し、次年度における研究会開催(2014年8月30日・於東京)の研究打合せを行った。
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Strategy for Future Research Activity |
鈴木暁世(代表)と橋本順光(分担)が調査結果及び研究成果を共有しながら研究を進める。鈴木は、日本、ロンドン及びダブリンにおける調査と研究成果報告に力点を置く。最終年度のため、平成25年度から準備を行ってきたシンポジウムと研究会を開催し、報告書を刊行して研究成果を広く発表する。 【1. 基本研究体制】鈴木は前年度の国際研究集会「日本近代文学のインターフェイス」における口頭発表「郡虎彦の世界戦略」を論文にまとめて発表する。鈴木と橋本は研究打合せを通して、シンポジウム、ワークショップへの準備を行う。シンポジウム、ワークショップの開催による研究成果の発表、専門家との議論・意見交換を通して研究成果を共有する。 【2. 資料の収集と調査】イギリス(V&A、大英図書館、SOAS)及びアイルランド(アイルランド国立大学ゴールウェイ校、アイルランド国立図書館)における郡虎彦・菊池寛の戯曲を中心とした日本演劇の上演に関する現地調査を行う。特にエディス・クレイグが演出を担当していた「パイオニア・プレイヤーズ」に関する資料を精査し、なぜエディス・クレイグ、エレン・テリーが郡虎彦の戯曲を紹介・受容したのかという問題を検討する。 【3. 研究成果の発表】研究会(8月、於・東京)、シンポジウム及びワークショップ(9月、於・大阪)において、専門家を招聘し郡虎彦についての口頭発表及び議論と研究情報交流を行う。そのための研究情報交換を兼ねた打合せも随時行う。テーマは英語圏と日本の近代文学における古典の受容と変容、昭和初期の日本におけるアイルランド文学受容の調査と研究を予定している。 【4. 研究成果報告書の刊行】 平成27年3月に科学研究費補助金の本研究課題の最終成果をまとめ、研究成果報告書を刊行する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
(1)平成23年度にアイルランド国立図書館及び九州大学付属図書館蔵郡虎彦旧蔵書、早稲田大学演劇博物館の調査を行う研究計画を立てて旅費等を計上していたが、当該年度は鈴木暁世(代表)が日本学術振興会・頭脳循環を加速する戦略的若手研究者海外派遣プログラムにおいてイギリス(平成23年4月~24年3月)及びアイルランド(平成24年3月)に一年間派遣されていたため、計上した額の旅費・経費が発生しなかった。 (2)平成23年度に一年間英語圏での現地調査を行うことが出来たことで、当初の研究計画よりも大幅に資料の収集と整理の計画が進展した。 (3)上記(1)(2)の理由から、平成24年度、平成25年度は一年繰り下げて研究計画を遂行した。さらに平成23年度に実施できなかった日本での調査に力点を置いて研究を遂行した。以上から、旅費及び経費、報告書印刷費に関わる未使用額が生じた。 (1)イギリス(V&A, SOAS, 大英図書館等)及びアイルランド(アイルランド国立大学ゴールウェイ校、アイルランド国立図書館等)における郡虎彦・菊池寛の戯曲を中心とした日本演劇の上演に関する現地調査を行うための旅費。(2)本研究課題の研究成果発表会としてシンポジウム(平成26年9月26日、於・大阪大学)を開催する。そのため専門家を招聘して研究情報を交換・議論するための謝金、旅費、経費。(3)研究成果報告書印刷費。おおむね以上の3項目に充てることとしたい。
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Research Products
(9 results)