2012 Fiscal Year Research-status Report
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23520452
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
山田 義裕 北海道大学, メディア・コミュニケーション研究院, 教授 (40200761)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
景山 弘幸 札幌大学, 外国語学部, 教授 (30258751)
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Keywords | 若者言説 / メタファー / 拡張現実 / ポップカルチャー |
Research Abstract |
平成24年度における本研究の進捗状況について、文献調査等に基づく理論研究の側面とフィールドワークや資料収集および分析などの経験的側面の二つに分けて述べる。最後に、研究成果の公開などの社会への還元の実績について触れたい。 文献調査に基づく研究としては、研究分担者と手分けをして二つのことを行った。一つは、Conceptual Metaphorに関する包括的検討を行った。Lakoff&Johnson(1980)からOrtony(1979)を経てJames J., III Mischler(2013)に至るまでの研究動向について検討した。もう一つは、現代の若者をとりまく社会の変化、特に今世紀に入ってからの情報化と消費化の質的変化が、若者のリアリティのあり方やアイデンティティ形成にどのように影響を及ぼしているかについて、主に社会学研究の分野の内外の最新の研究を検討した。後者については、その成果を「「拡張現実」の時代のコミュニケーションとツーリズムの新たな可能性」(『観光創造への挑戦』(石森秀三編、近刊)に収録)という論考にまとめた。 フィールドワークについては、当初の計画の通り、研究分担者と共にパリのJapan Expo 2012を視察し、参与観察をとおして海外の若者がいかに日本のポップカルチャーを受容しているかを調査した。この調査に基づき、日本のポップカルチャーが、なぜ先進国において急速に注目を浴びるようになったのかについて分析を試みているところである。また、若者言説のデータベース化についても、メディアの記事や新書などの資料の収集を前年度に引き続き行った。 研究成果の公開については、「観光創造へ挑戦」という公開講座(2012年2月23日、24日、北海道大学)において、「拡張現実の時代のコミュニケーションとツーリズムの新たな可能性」と題し、当研究の成果の一部を社会に向けて公開した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度の研究の目的の一つは、若者の行動やコミュニケーション様式の変容を、フィールドワークを通じて調査することであった。これについては、昨年7月にパリで開催されたJapan Expoへの調査旅行などを通じて、基礎資料の収集ができた。また、研究分担者を中心にConceptual Metaphorの研究について、最新の研究に至るまでのレビューを進めた。研究分担者は、それに基づいた論考を現在執筆中で、次年度に発表予定である。フィールドワークとConceptual Metaphorの基礎研究はおおむね順調に進んでいるが、一方若者の行動やコミュニケーションについての言説のデータベース化と計量的分析はやや遅れている。しかし、若者言説のデータ自体はすでに研究分担者と協力して十分な数を集めており、これらをデータベース化した上で、計量的分析を行う予定である。どのようなベータベースを構築するかは、その後の計量的分析で何を行うかが明確にならないと進められないため、順序としては、まず言説分析の計量分析の目的を明確にすることから始める。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度においては、若者言説コーパスの概念メタファー分析に基づき明らかにしたメディアにおける若者イメージを、フィールドワークと文献調査を通じてまとめた若者の意識と行動の実態と比較するのが第一の目的である。メディアの作り出す若者イメージと、彼らの意識と行動の実態のズレに注目し、こういった乖離がどのような社会的、政治的文脈から生じているかについて批判的言説分析を行う。メディアの若者言説といっても、その領域は多岐に渡るため、本研究が最終年度となることを考慮に入れた場合、時間的制約から取り扱う社会現象の領域を絞り込む必要が出てくる。現時点では、「若者と旅/観光」、「若者と文化」などメディアの若者イメージと若者の実際の行動に乖離が大きいと予想されるトピックにフォーカスして、計量的分析を試みる予定である。 最終年度のもう一つの計画は、批判的メタファー分析の教育の場への応用を考えることである。本研究を一つの事例として、大学の教養教育の一つとして重要性が増している「批判的思考」や「メディア・リテラシー」に関する教育を概念メタファー理論に基づいて理論化していくことを目指す。この研究を教育現場や社会に還元する具体的試みの一つとして、本研究に立脚したメディアリテラシーの授業計画を実際に立てることで、平成26年度に予定している公開講座における連続講義の準備を行う予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
・これまでに収集したデータの整理と分類、およびそれに基づくデータベース構築のための人件費 ・批判的言説分析に関する著作の購入 ・研究成果公開のための費用 ・24,991円は平成25年度4月末払い分です。
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