2013 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
23520463
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
金子 真 岡山大学, 社会文化科学研究科, 准教授 (00362947)
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Keywords | 複数性 / 累加複数 / 結合複数 / 等位接続 / 特定性 / 対称性 / coordinated whole / similative plural |
Research Abstract |
本年度は次の二つの観点から研究を行った。 (I)まず、マレー語など他の類別詞言語の複数形との比較から、タチ・ラについて新たな提案を行っているNomoto 2013 (Number in Classifier Languages. PhD thesis, the University of Minnesota) を批判的に検討しながら、次のような主張を行った。 (a)Nomotoは「日本語の文法数には単数/複数/general number (単複の区別の中和)という3つのカテゴリーがあり、タチ・ラは専ら複数表示を担う」と主張するが、タチ・ラはgeneral numberも表しうる。 (b)タチ・ラは均質な成員の集合を表す「累加複数用法」と異質な成員の集合を表す「結合複数用法」を持つが、それ以外の用法も観察されることを考えると、Nomotoの主張するように2つの用法を別個のものと考えるよりは、結合用法から累加用法が派生すると考える方が適切である。 (c)タチ・ラの定性や特定性は、それらが観察されない場合もあることを考えると、Nomotoのように非顕在的なDPにより統語的に説明するよりも、「タチ・ラが付く名詞句の外延は際立ち度が高い」という語用論制約(結合用法に由来する)に帰する方が適切である。 (II)上記(Ib)に関連して、タチの付加が名詞句全体の指示対象の数が変えない場合(ex.「トムとジェリータチがお互いに争う」「半年かかってやっと両想いになったうちラタチ」)を詳しく分析した。そしてこうしたタチは、名詞句全体の外延が、個体の寄せ集めである「総和」や個々のメンバーの個別性が失われる「グループ」ではなく、coordinated whole(=個々のメンバーが個別性を維持しつつ、同じ事態に参与することによって相互に関係し合いないながら全体をなすもの)であることを表すものだと主張した。
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Research Products
(5 results)