2011 Fiscal Year Research-status Report
継承沖縄語と大和沖縄語――談話構造とコミュニケーション方略の国際比較研究
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23520466
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Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
宮平 勝行 琉球大学, 法文学部, 教授 (10264467)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2016-03-31
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Keywords | 国際情報交流 / ニュージーランド |
Research Abstract |
平成23年度の主要な研究成果は下記2本の論文に収められている。いずれも平成24年12月に出版予定のHandbook of the Ryukyuan Languages (P. Heinrich & S. Miyara [eds.], De Gruyter)に所蔵予定である。1. Miyahira, K. & Petrucci, P. R. (in press). Uchinaaguchi as an online symbolic resource within and across the Okinawan diaspora. 2. Petrucci, P. R. & Miyahira, K. (in press). Okinawan language (Uchinaaguchi) in the linguistic landscape of Heiwa Dori and Makishi Market. 論文1では,継承沖縄語が,沖縄という場に依拠せずグローバルに展開するオキナワン・アイデンティティを創造する上で象徴的役割を担っていることを論じた。沖縄の町市場における言語景観の研究(論文2)においては,漢字,ひらがな,カタカナ,英字で表記される斬新な沖縄語の表現形式が示唆する沖縄語の社会的意義を考察し,消滅の危機に直面する言語の復興の可能性を論じた。いずれの論文も混成語のデータを分析し,既存の文献を踏まえて考察した。その点において当初の研究目的に合致する成果である。 12月にはマレーシアで開催された言語と異文化コミュニケーション学会において,「市民生活における沖縄語の言語景観」という題目で発表した。ニュージーランドのマシー大学にでは,「沖縄語の言語接触」という題で講義し,マオリ語のイマージョン学校を視察した。これらの活動結果を活かして今後は言語接触の比較分析を行う。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度の第一の目標は,豊富にある既存の沖縄大和語に関する文献の整理である。この点については豊富にある既存の文献を読むことによって,沖縄語と標準日本語の接触によってもたらされた言語事象を体系的に捉えることができた。沖縄大和語に関するテンス,アスペクト,ヴォイス,モダリィティの研究は最近著しい進歩を遂げており,本研究が目指す大和沖縄語の談話構造と語用論的特徴を見いだす上で大いに参考になることがわかった。文献を通読し,その成果を2本の社会言語学研究論文に反映できた点で初年度の目標は達成できたものと考えている。 一方で,沖縄大和語と大和沖縄語の会話データの収録は思うように進んでいない。特に県内在住の20代から70代の会話データの収集が遅れている。「第5回世界のウチナーンチュ大会」においては,大会イベントを中心に海外から参加された県系人を対象に聞き取り調査を行った。沖縄大和語と大和沖縄語の談話構造とコミュニケーション方略を解明するには自然発生的な会話の収録と計画的なフィールドワークが必要となるので,次年度はこの点に重点的に取り組む予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度は沖縄語と標準日本語の談話構造に関する文献調査とデータ収集を進め,それぞれの特徴を明らかにしたいと考えている。そのために必要な談話機能分析の技術を磨くため,この分野で世界をリードするカリフォルニア大学ロサンジェルス校とサンタバーバラ校が主催する<言語,インタラクション,文化>学会に参加する予定である。沖縄語を母語とする70代以上のグループと標準日本語を母語とする10代及び20代のグループから会話データを収集し,沖縄大和語と大和沖縄語の談話構造の違いを分析する。米国西海岸における最先端の分析法を活かして,沖縄語が標準日本語の談話に混入する際,どのような意味論的・語用論的機能を果たすのか考察する。また,対話の開始や終了の連鎖において沖縄語がいかなる機能を果たすのかを分析する。総じて沖縄語が対話のなかでどのような形で表れ,インタラクションにどのような影響を及ぼすのかを考察するのが本年度の大きな目標である。 沖縄語の言語接触事象を的確に理解するために,世界各地の言語接触の事例を調査することも今後の大きな課題である。事例研究を相互に比較対照することによって,言語接触の結果生まれた接触言語が対話においてどのような機能を果たすのか,多くの知見が得られはずである。この点においては沖縄移民子弟にも母語話者が多い英語,スペイン語,ポルトガル語との接触言語に注目する予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度は学会参加及び会話データ収集や聞き取り調査のための海外出張を2回計画している。平成24年5月には談話機能言語学で世界をリードするカリフォルニア大学ロサンジェルス校で実施される学会に参加する予定である。また,夏には研究協力者と共にハワイもしくはサンパウロにおいて聞き取り調査とフィールドワークを実施する計画である。これらの活動のための旅費に予算を充てる予定である。 本年度から本格的に実施する自然会話の収集や聞き取り調査記録のための機材も必要となる。収集した会話データや聞き取り調査結果を整理するための補助要員を1人,短期間雇い上げる計画もある。 研究活動には文献が欠かせないため,和書・洋書の図書費を計上している。図書館相互貸出システムで学内にない図書を入手したり,研究論文の複写サービスを利用するために本予算を用いる。平成24年度は特に会話分析,談話分析,相互行為分析,接触言語学などの文献を精力的に読み研究を進めたい。
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Research Products
(3 results)