2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23520517
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Research Institution | Fuji Women's University |
Principal Investigator |
井筒 美津子 藤女子大学, 文学部, 准教授 (00438334)
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Keywords | 国際研究者交流(ヨーロッパ、北米) / 国際情報交換(ヨーロッパ、北米) / 社会言語学 / 談話研究 / 方言 / 誤解・誤伝達 / 文末表現 |
Research Abstract |
本研究は、一見共通語的でありながら、地域方言的な意味・機能を発達させている表現(擬似共通語)等に起因する誤解・誤伝達の仕組みを明らかにすることを目的とする。特に、情緒伝達機能を担っている点で、他方言話者の誤解・誤伝達を誘引し易い文末詞の方言的解釈の多様性を詳らかにすることを目指す。 二年目の平成24年度は、昨年度の関西地方調査に引き、北海道方言の擬似共通語に関する印象調査を3月に関東地方で実施した。これは、前採択課題(基盤研究C 20520360)で編纂した「北海道方言コーパス」(井筒 2011)の中から、文末詞『さ』と『しょ』が使用されている会話を抜粋し、これら文末詞の使用に関する関東方言話者の印象を調査するものである。この印象調査と並行して、関東地方で使用されている『さ』や『(っ)しょ』に関する北海道方言話者の印象調査を実施するための談話資料の収集を関東地方で行った。加えて、昨年度行った北海道方言文末詞に対する関西地方印象調査で得られたインタビュー資料の聞き起こしを行い、データ分析方法に関する文献調査を行った。 また、この文末詞の使用に関する印象調査の基礎研究として、文末詞『さ』の共通語と北海道方言の違いについて、3月に東京で行われた第31回社会言語科学会で発表した。 さらに、日本語やその他の言語の文末詞や心態詞の史的発達やそれらの情緒伝達機能の獲得過程についての研究も行った。この研究に関する一連の成果は、5月にフランスで行われたInternational Conference on Grammaticalization Theory and Data、カナダで行われた11th Conceptual Structure, Discourse, Language Conference、8月にスウェーデンで行われた第45回ヨーロッパ言語学会で発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
交付申請書における平成24年度の研究計画は以下の通りであった。 (1)「他地域に類似した形式が存在しながらも、明らかに特定の地域方言的な意味・機能を発達させている」表現が他方言話者によってどのように解釈・誤解されるのかを捉えるための記述モデルの策定、並びにその改訂。 (2)「北海道方言に類似した形式が存在しながらも、明らかに特定の地域方言的な意味・機能を発達させている」他地域方言に対する北海道方言話者の印象調査の実施。 平成24年度は、補足的課題や発展的研究の必要性を翌年度以降に残しながらも、初年度に計画した上記二点の研究をおおむね実施した。(1)については、誤解・誤伝達の記述モデルの実践・応用に必要な文末詞の方言的特性を調査した。特に、本年度は、北海道方言と共通語の文末詞『さ』の対照研究を行い、その成果を第31回社会言語科学会で発表した。(2)については、他地域方言に対する北海道方言話者の印象調査の実施に今後用いる音声資料を、関東地方で収集した。上記以外に、昨年度関西地方で実施した北海道方言文末詞の印象調査で得られたインタビュー資料を整理し、その聞き起こしを行った。また、同様の印象調査を関東地方でも行った。さらに、これらインタビュー資料の分析方法に関する文献調査を行い、質的研究(M-GTA, KJ法,エスノグラフィーなど)についての知見を得た。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度は、初年度に策定した誤伝達の記述モデルの改訂を進めながら、「北海道方言に類似した形式が存在しながらも、明らかに特定の地域方言的な意味・機能を発達させている」他地域方言に対する北海道方言話者の印象調査を実施する予定である。また、23年度、24年度に関東・関西地方で実施した北海道方言の文末詞の使用に対する印象調査の結果を分析し、まとめる予定である。さらに、文末詞の情緒伝達機能という観点から、言語表現が生起する文内の位置とコミュニケーション上の機能に関する理論的研究も進め、その成果を9月にインドで行われる第13回国際語用論学会で発表する予定である。また、誤解・誤伝達の記述モデルの更なる改訂を進めるために、6月にカナダで行われる第12回国際認知言語学会に参加し、言語・コミュニケーション理論や認知社会言語学に関する最新の研究成果を取り入れ、それを当該研究に活用する予定である。 最終年度となる平成26年度は、情緒伝達機能を担う日本語文末詞の使用に関わる誤伝達の仕組みを、対人コミュニケーションへの実践的応用可能な方策として提案することを目指す。三年度目までの計画が、擬似共通語などに起因する誤伝達が生じる仕組みを解明することに力点を置くのに対して、最終年度は、その仕組みを土台として、誤伝達、特に「気づきにくい」方言的差異に基づく誤解などに起因する人間関係上の摩擦や軋轢といった問題を未然に回避したり、そうした問題が生じた場合にその解決を図るために、どんな方策が立て得るのかを明らかにすることに焦点を置く。得られた成果は国内外の学会等で発表し、さらにその成果を実践に応用しやすくするために冊子の形でまとめる予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度も、前年度同様、国内外の言語調査や様々な言語研究における経験が豊富な井筒勝信氏に「研究協力者」を依頼し、方言印象調査の実施や言語分析等に際し、同氏の協力・助言を仰ぐ。 平成23年度は、予定していた国際学会での発表に際し、研究代表者の旅費の一部が所属大学の研究奨励助成(海外学会発表)により充当することが出来た為に、次年度に繰り越す研究費が生じた。そのため、繰越金の額は大幅に減ったものの、平成24年度も若干の繰越金が生じた。 平成25年度は、現在のところ、6月にカナダで開催される第12回国際認知言語学会への参加と9月にインドで開催されるで第13回国際語用論学会での研究発表を行う計画である。これらの学会には、研究協力者の井筒勝信氏にも参加を依頼する予定である。これら学会参加・発表に係わる旅費の一部を平成24年度未使用分と平成25年度の研究費から充当する予定である。 その他、方言印象調査や調査に使用する談話資料の収集を行う予定があることから、この調査運営費を平成25年度研究費から計上する。
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Research Products
(5 results)