2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23520517
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Research Institution | Fuji Women's University |
Principal Investigator |
井筒 美津子 藤女子大学, 文学部, 准教授 (00438334)
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Keywords | 国際研究者交流(ヨーロッパ、北米、アジア) / 国際情報交換(ヨーロッパ、北米、アジア) / 社会言語学 / 談話研究 / 方言 / 誤解・誤伝達 / 文末表現 |
Research Abstract |
本研究は、一見共通語的でありながら、地域方言的な意味・機能を発達させている表現(擬似共通語)等に起因する誤解・誤伝達の仕組みを明らかにすることを目的とする。特に、情緒伝達機能を担っている点で、他方言話者の誤解・誤伝達を誘引し易い文末詞の方 言的解釈の多様性を詳らかにすることを目指す。 三年目の平成25年度は、昨年度関東地方で行った北海道方言の擬似共通語に関する印象調査のインタビューデータの聞き起こしを行い、それらのデータを質的研究法の一つである修正版グラウンデッド・セオリー(M-GTA)に基づき分析した。そして、M-GTAによる分析結果を「方言イメージの形成過程」としてモデル化を行い、その成果を3月に行われた第33回社会言語科学会(神田外国語大学)において口頭発表を行った。 さらに、文末詞の情緒伝達機能という観点から、言語表現が生起する文内の位置とコミュニケーション上の機能に関する理論的研究を行い、その成果を9月にインドで行われた13th International Pragmatics Conferenceのpanel session (The Pragmatics of Linguistic Elements at Right Periphery)において口頭発表を行った。そこでは、pragmatic markerのRP(右方周辺部)への固定化は、日本語のみならず、英語にも観察され、共に情緒伝達機能の獲得が伴うということを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
交付申請書における平成25年度、平成26年度の研究計画は以下の通りであった。 (1)平成25年度: 前年度に引き続き、「北海道方言に類似した形式が存在しながらも、明らかに特定の地域方言的な意味・機能を発達させている」他地域の表現に対して、北海道方言話者がどのように解釈するかの観察を行い、他地域方言に対する北海道方言話者の誤解が生じる過程を分析する。 (2)平成26年度: これまでの調査に基づき、日本語の文末詞と呼ばれる要素が談話・語用論上で担う、情緒的な意思伝達や意思疎通の仕組みを明らかにする。 研究実施状況としては、平成25年度と平成26年度に実施を予定していた研究内容の順序が一部変更となったが、進捗状況としてはおおむね順調である。 平成25年度は、前年度に実施した方言印象調査の分析を行い、その結果を方言イメージの形成過程としてモデル化を行った。また、初年度の平成23年度には、概念構造記述とプロトタイプ意味論双方の観点から見た誤伝達や誤解の記述モデルの策定を行っている。これら二つの研究は、平成26年度に予定していた文末詞の使用に起因する情緒的な意思伝達・意思疎通の仕組みの策定の中心となるものである。従って、平成26年度に予定していた研究計画は、前倒しという形で本年度までに概ね達成したと言える。 その一方で、平成25年度に本来予定していた、他地域方言に対する北海道方言話者の評価や文末詞等の使用に起因する誤伝達の調査をまだ実施していないことから、最終年度にあたる平成26年度に上記調査を実施し、その結果を用いて本年度までに策定したモデルの妥当性を検証する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度も、これまでと同様、国内外の言語調査や様々な言語研究における経験が豊富な井筒勝信氏に「研究協力者」を依頼し、方言印象調査の実施や言語分析等に際し、同氏の協力・助言を仰ぐ。 既に述べたように、平成26年度に予定していた研究計画は概ね達成されていることから、本年度は、平成25年度に本来予定していた研究計画を遂行する予定である。「北海道方言に類似した形式が存在しながらも、明らかに特定の地域方言的な意味・機能を発達させている」他地域方言に対する北海道方言話者の印象調査を実施し、その調査結果を基に、平成25年度までに策定したモデルの妥当性を検証する。 また、日本語の文末詞と類似した情緒伝達機能を担うとされる心態詞(modal particle)に関するワークショップ(Workshop on Modal Particles)が今年7月にデンマークで行われる。研究代表者と研究協力者は、ディスカッサントとして参加を依頼されていることから、ワークショップへの参加を通して、他言語の情緒伝達要素(文末詞や心態詞など)についての見聞を深め、海外研究者との交流を行う予定である。 さらに、日本語やその他の言語の文末(節末)要素の史的発達やそれらの情緒伝達機能の獲得過程についての研究も引き続き行う計画である。特に、日本語と英語のように語順が異なる言語の節末(文末)要素について、認知プロセスの観点から研究を行い、この成果を今年11月にアメリカ(サンタバーバラ)で行われる国際学会(Conceptual Structure, Discourse, and Language 2014) で発表する予定である。 これらの国際学会参加に係わるの旅費(研究代表・研究協力者分)や方言印象調査に係わる運営費を、平成25年度までの未使用分の研究費と平成26年度研究費から計上する予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
実施を予定していた研究内容の順序が一部変更となったため、平成26年度への繰越金が生じた。 繰越金は、平成26年度に予定している国際学会への参加や方言印象調査運営費等に使用する予定である。
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Research Products
(6 results)