2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23520518
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Research Institution | Hokkai School of Commerce |
Principal Investigator |
水野 俊平 北海商科大学, 商学部, 教授 (70438399)
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Keywords | 朝鮮語 / 外邦図 / 地名 / 中期朝鮮語 / 古代朝鮮語 |
Research Abstract |
(1)19世紀末から20世紀初にかけて作成された「外邦図(朝鮮・略図)」の地名を地理情報処理プログラムを利用してすべて入力し、地名解析のための基礎データベースを作成した。 (2)(1)において作成したデータベースに補助資料である「外邦図(朝鮮・基本図)」の地名をあわせて入力し、「外邦図(朝鮮・仮図)」地名の誤字・脱字・読法未記載といった欠陥を補完した。さらに、この作業を通じて朝鮮半島の地名の持つ「地名の両面性」という性格の解明を目指した。「地名の両面性」とは一つの地名に複数の呼称がある場合を指し、大概の場合、固有語地名・漢字語地名の二重性を成している。複数の地形図の地名を対照することで地名の持つこうした両面性を解明することが可能になる。 (3)平成24年10月26日、韓国・韓国学中央研究院で開催された韓国地名学会にて「『旧韓末韓半島地形図』地名に現れたK口蓋化現象について」という発表を行った。これは地名に含まれた語彙に見られる口蓋音化の分布を探るもので、20世紀初頭における地域言語の音韻現象の一端を解明しようとするものである。なお、この研究成果は韓国地名学会の機関誌である『地名学』18号(平成25年1月)に掲載された。 (4)平成24年10月6日、福岡・福岡大学で開催された朝鮮学会において「『旧韓末韓半島地形図』の地名表記について」という発表を行った。これは「外邦図(朝鮮・略図)」の地名が朝鮮語学において占める資料的価値を論じたものである。 (5)『北海商科大学紀要』2号において「外邦図(朝鮮・略図)における古代朝鮮語語彙」という論文を発表した。これは、「外邦図(朝鮮・仮図)」の地名に含まれる城塞関連語彙の分布を明らかにしたもので、地名がどれだけ古層の朝鮮語を維持しているかを明らかにしようとする研究の一環である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
(1)19世紀末から20世紀初にかけて作成された「外邦図(朝鮮・略図)」の地名を地理情報処理プログラムを利用してすべて入力し、地名解析のための基礎データベースを作成した。当初は9ヶ月の期間が必要とされると予想されたが、実際には6ヶ月で終了する等、作業進捗は順調であった。 (2)(1)において作成したデータベースに補助資料である「外邦図(朝鮮・基本図)」の地名をあわせて入力し、「外邦図(朝鮮・仮図)」地名の誤字・脱字・読法未記載といった欠陥を補完した。さらに、この作業を通じて朝鮮半島の地名の持つ「地名の両面性」という性格の解明を目指した。「外邦図(朝鮮・基本図)」の収集が大きな課題であったが、不断の努力により国立国会図書館に所蔵されている地形図のうち必要とするすべての資料を収集することができた。ただし、その地名資料を(1)で作成したデータベースに入力する作業は資料の膨大さゆえに若干進捗に遅れがあり、今年度の上半期において進捗度の向上が求められる。 (3)(1)(2)の作業を通して得られた成果を国内外の学会で2回発表し、2編の論文として発表することができた。研究は中間段階であるが、作業の進捗とともに得られたデータによって予想以上の成果が得られていることの現れであるといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)すでに完成したデータベースに補助資料である「外邦図(朝鮮・基本図)」の地名をあわせて入力し、「外邦図(朝鮮・仮図)」地名の誤字・脱字・読法未記載といった欠陥を補完し、地名の持つ両面性という特質を解明する。 (2)地名の前部要素(地名から「洞」「谷」「山」「川」などの後部要素を部分)に含まれる固有朝鮮語語彙を抽出し、そこにどれほどの朝鮮語古語が含まれ、どの時期にまで遡及することができるかを明らかにする。 (3)得られた地名のうち最も資料的価値の高いと思われる訓読地名(朝鮮語固有語地名)および音借地名(朝鮮語固有語地名を漢字の音を借りて表記した地名)について韓国側資料(『韓国地名総覧』など)を用いてハングルで復元する。 (4)(3)で作成されたデータベースをもとに、地名の後部要素(地名における「洞」「谷」「山」「川」などの部分。多くの地名に共通して含まれる要素を指す。)に含まれる固有朝鮮語語彙を抽出し、そこにどれほどの朝鮮語古語が含まれ、どの時期にまで遡及することができるかを明らかにする。また、古代・中期朝鮮語の実相を明らかにする資料的価値の有無についても検証する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
(1)得られた成果をもとに朝鮮学会、国語学会(韓国)、韓国地名学会などにおける発表を目指す。 (2)得られた成果を朝鮮学会、国語学会、韓国地名学会、韓国朝鮮文化研究会などの学会誌・学術誌に投稿し掲載を目指す。 (3)研究成果の報告書を作成し、刊行する。 (4)インターネット上で研究によって得られた地名に関する情報を公開・提供し、サイト閲覧者(韓国人)からのさらなる地名情報収集を目指す。
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Research Products
(4 results)