2013 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
23520518
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Research Institution | Hokkai School of Commerce |
Principal Investigator |
水野 俊平 北海商科大学, 商学部, 教授 (70438399)
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Keywords | 朝鮮 / 地形図・外邦図 / 地名 / 古代朝鮮語 / 方言 |
Research Abstract |
本研究は「外邦図(略図・朝鮮)」(以下、略図と称する)の地名を朝鮮語資料として活用することを目的とするものである。研究の結果、457面の略図を収集し、44,181個の地名が採集された。 地名は「音読地名」「訓読地名」「音訓混用地名」に分けられる。「音読地名」に属する地名が圧倒的に多く、全体の6、7割程度を占める。「音読地名」「訓読地名」には漢字の音や訓のみを借りた借字表記も含まれる。また、朝鮮の地名は同一の地名でありながら、複数の読み方(呼び方)が存在するものが多い。 「略図」から「城塞」をあらわす語彙を抽出した結果、わずかに新羅系の「cas」が内陸地方の山間部を中心に分布していることが明らかになった。ただし、高句麗系の「忽」や百済系の「己」は見いだされなかった。 「略図」から「kip-」(深い)が含まれる語彙を抽出し、k口蓋音化現象の分布を調査した結果、既存研究で明らかになったk口蓋音化現象の分布とは異なる分布や、時間の経過とともに、k口蓋音化現象が拡散したと考えられる痕跡も見いだされた。 「略図」の山岳関連地名の分布を調査した結果、「山」の古語である「mae(mi)」の分布が明らかになった。「山」を意味する朝鮮語語彙は「moe」であったと考えられ、「moe」は「mae」に変化する一方、中部地方で「mae」から新しい形態の「mi」が生じ、次第にその勢力を拡大させていったものと考えられる。 「略図」から地名の後部要素を抽出し、その分布を調査した結果、「sil」「mal(maeul)」「ki(基)」「ol」「ul」の偏在が明らかになった。また、新羅固有の後部要素とされる「伐」の出現は極めて限られており、百済固有の後部要素とされる「夫里」は現れなかった。後部要素は経年的な変化を受けにくいと思われるが、古代朝鮮語の後部要素を保存しているという可能性については、再考の余地がある。
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Research Products
(4 results)