2012 Fiscal Year Research-status Report
語用論的推論の神経科学的研究:文脈的含意と会話的含意
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23520521
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Research Institution | Mejiro University |
Principal Investigator |
時本 真吾 目白大学, 外国語学部, 教授 (00291849)
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Keywords | 脳波 / ERP / ERSP / Phase Locking Value / Coherence / deduction / abduction |
Research Abstract |
本研究は、言語コミュニケーションにおける伝達意図理解において、演繹とアブダクションが重要な役割を果たしている点に着目し、言語刺激の語用論的操作によって両者の脳内機序を実験的に考察する。特に、時間解像度が高い脳波を指標として、これまで全く不明だった語用論的推論の時系列機序を検証する。本研究では、様々な会話について(1)(2)の様に文脈を操作し、会話の視覚・聴覚提示に伴う脳電位変化を測定することで語用論的推論の神経基盤を考察する。 (1) 演繹談話 A:「新任の近藤教授は哲学専攻なんだってね。」B:「近藤さんと話したことある?」C:「僕は哲学者とは話をしないんだ。」 (2) アブダクション談話 A:「新任の近藤教授は関西出身なんだってね。」B:「近藤さんと話したことある?」 C:「僕は哲学者とは話をしないんだ。」 初年度は(1)(2)のCの発話が惹起する事象関連電位(event related potential, ERP) を測定し、それぞれの脳内処理に対応するERP成分を特定した。即ち、(2)のCは(1)のCよりも、潜時約400msの陰性成分(N400)の振幅が大きかった。N400は一般に意味処理の指標と考えられているので、アブダクション談話の振幅が演繹談話よりも大きかったことは、アブダクションが演繹よりも、より複雑な脳内処理を伴うと示唆された。本年度は、両談話が惹起する脳波の周波数スペクトル分析(Event Related Spectral Perturbation, ERSP)を行った。その結果、広い潜時帯において演繹談話のパワーがアブダクション談話を上回っていることが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
意図理解に関する推論は人間の認知処理の中でも最も高次と考えられる処理で、また、どのような形で情報がコード化されているか不明である。さらに、膨大な脳波データの他種多様な解析に関して、技術的に新たな試みを多く強いられているため、解析に予想外に時間がかかった。
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Strategy for Future Research Activity |
脳波データの解析については新しい計算手法の学習が必要で、関連する先行研究についても多くの知見を新たに整理する必要があった。しかし、計算手法の習得はほぼ終わり、新しい解析がすぐにも始められる状態になった。関連研究についての評価も必要十分と考えている。まず現有データの更なる解析と論文執筆に取り組む予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
上記の通り、現有データの新手法による解析と論文執筆の準備が整った。投稿の後は、実験参加者2名から同時に脳波計測を行い、コミュニケーションにおける相互作用の神経基盤の考察に進みたい。ついては、脳波計測装置を拡充する予定である。
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