2013 Fiscal Year Annual Research Report
語用論的推論の神経科学的研究:文脈的含意と会話的含意
Project/Area Number |
23520521
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Research Institution | Mejiro University |
Principal Investigator |
時本 真吾 目白大学, 外国語学部, 教授 (00291849)
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Keywords | 推論 / EEG / 語用論 / 含意 / 大域的同期 |
Research Abstract |
本研究は、言語コミュニケーションにおける伝達意図理解において、演繹とアブダクションが重要な役割を果たしている点に着目し、言語刺激の語用論的操作によって両者の脳内機序を実験的に考察する。特に、時間解像度が高い脳波を指標として、これまで全く不明だった語用論的推論の時系列機序を検証する。本研究では、様々な会話について(1)(2)の様に文脈を操作し、会話の視覚・聴覚提示に伴う脳電位変化を測定することで語用論的推論の神経基盤を考察する。 (1) 演繹談話 A:「新任の近藤教授は哲学専攻なんだってね。」B:「近藤さんと話したことある?」C:「僕は哲学者とは話をしないんだ。」 (2) アブダクション談話 A:「新任の近藤教授は関西出身なんだってね。」B:「近藤さんと話したことある?」 C:「僕は哲学者とは話をしないんだ。」 まず、(1)(2)のCの発話が惹起する事象関連電位(ERP) を測定し、それぞれの脳内処理に対応するERP成分を特定した。即ち、(2)のCは(1)のCよりも、潜時約400msの陰性成分(N400)の振幅が大きかった。N400は一般に意味処理の指標と考えられているので、アブダクション談話の振幅が演繹談話よりも大きかったことは、アブダクションが演繹よりも、より複雑な脳内処理を伴うと示唆された。また、両推論が惹起する脳波の周波数スペクトル分析を行った結果、パワー値の大小は頭皮上の位置、潜時帯、周波数帯域によって異なることが明らかになった。この事は、言語コミュニケーションにおける伝達意図の理解には、異なる脳領域が、それぞれ別の時間帯で活動していて、かつ、意図理解に伴う推論の種類によって処理内容・脳領域が異なることを示唆している。本研究の成果は、日本神経科学学会、日本基礎心理学会、包括脳ネットワークワークショップ等の学会で発表し、現在、投稿論文執筆中である。
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Research Products
(3 results)