2011 Fiscal Year Research-status Report
日本手話と日本語対応手話の混合言語(中間型手話)の言語的特徴の解明
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23520530
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Research Institution | Toyota Technological Institute |
Principal Investigator |
原 大介 豊田工業大学, 工学部, 教授 (00329822)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 中間型手話 / 媒介手話 / 混合言語 |
Research Abstract |
従来、中間型手話と呼ばれてきた手話を、ろう者が聴者との会話時に使用すると考えられる中間型手話(媒介手話D)と聴者がろう者との会話時に使用すると考えられる中間型手話(媒介手話H)に分け、媒介手話Dがどのような言語的特徴を持っているかを調べるために、平成23年度は、以下のデータを収集した。1.日本手話使用者と媒介手話H使用者によるテーマ設定状況下における会話のデータ、2.日本手話使用者同士(2名)によるテーマ設定状況下における日本手話の会話データ(比較対照用)、3.日本手話使用者が単独で表した手話単語(比較対照用)「1」では、日本手話使用者を媒介手話H使用者(聴者)とペアにし、研究者側であらかじめ決めておいたテーマについて自由に会話をしてもらい、その状況を動画として電子的に記録した(6組分)。「2」では、日本手話使用者同士(2名)をペアにして、「1」と同様に、研究者側であらかじめ決めておいたテーマについて自由に会話をしてもらい、その状況を動画として電子的に記録した(2組分)。「3」では、8名の日本手話使用者に、それぞれCL的表現を含む日本手話単語32語を表してもらい、それを動画として電子的に記録した。「1」及び「2」の会話データには、非手指動作(疑問文、条件文、関係節、句の境界の提示等にかかわる非手指動作)、動詞の屈折、関係節が含まれるようテーマ設定をした。 上記の手話動画データは、ELANと呼ばれる動画解析ツールを用いて、フレームごとに解析され、アノテーションを付与される作業に付される。そのため、平成23年度は、研究代表者がELANの使用方法に関する知識の提供を受けるとともに、ELANを用いて解析作業を行う研究補助者4名に、研究趣旨を説明したのち、ELANによる解析方法を教授し、平成24年度以降の解析作業に備えてもらうとともに、動画データの一部の解析作業を開始した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初は、日本手話および日本語対応手話について、コントロールされた状況下で動画撮影を行い、それぞれについてELANを使って(1)非手指動作、(2)リズム・プロソディ、(3)動詞の屈折、(4)名詞句の修飾方法、(5)分類辞の特徴を解析する予定であったが、これらの動画撮りおよび分析は、平成24年度に予定していた会話データ(日本手話使用者同士の会話データ、および日本手話使用者と媒介手話H使用者の会話のデータ)を分析し、その結果、より詳細なデータが必要になった時点で、ポイントを絞り動画データ撮影および分析を行った方が有効性が高いと判断し、平成24年度に予定していた会話データの撮影・記録作業を優先して行った。また、それに続く動画データ内の手指動作および非手指動作(瞬き,頷き,口の動きなど)を、ELANを用いて記号化(アノテーションの付与)・記録する作業も同一年度内に完了する予定であったが、この作業は一部着手するにとどまり、すべての動画データ解析作業を完了するまでには至らなかった。その理由として、動画撮影の開始が遅れたことが挙げられる。日本手話使用者は全国的に人口が少ないだけでなく、研究目的に叶った研究協力者を必要な人数探しだし研究協力の承諾を得るまでに時間を要したこと、および研究に協力してもらう日本手話使用者・媒介手話H使用者の多くが平日は都合が付かず、研究協力者と研究者の間での日程調整に時間がかかったことが大きい。また、タイの洪水のために予定していたビデオカメラが生産中止に追い込まれ、ビデオカメラを入手するのに時間を要したことも作業が遅れた原因である。
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Strategy for Future Research Activity |
(1) 平成23年度に撮影・記録した動画データの解析作業を完了させる。(2) 解析作業を済ませた手話動画データを使用して、中間型手話(媒介手話Dおよび媒介手話H)の非手指動作の特徴、語(屈折する動詞や分類辞を含む)および文のプロソディックな特徴、名詞句の修飾方法(関係節を含む)に関して、日本手話および日本語対応手話と比較対照しながら分析する。(3)上記(2)の分析作業の過程で、より詳細なデータが必要となる項目について、追加で動画撮影を行い、そのデータを、ELANを使い詳細に分析する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度使用額(491,808円)の多くは、会話データの動画解析作業が遅れたために生じた未執行分の人件費、およびコントロールされた状況下における日本手話動画撮影の際に必要となる予定の手話通訳者謝金であった。次年度使用額は、平成23年度に撮影した動画データの解析作業を完遂する人件費に充てられる。また、コントロールされた状況下における日本手話の動画撮影は、会話データを分析後に、より詳細なデータが必要となった際に行い、その際の通訳謝金として次年度使用額の一部を充当する。次年度の使用計画は以下の通りである。物品費0円、旅費 200,000円、人件費・謝金 1,080,000円、その他 11,808円、合計1,291,808円
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Research Products
(1 results)