2012 Fiscal Year Research-status Report
日本手話と日本語対応手話の混合言語(中間型手話)の言語的特徴の解明
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23520530
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Research Institution | Toyota Technological Institute |
Principal Investigator |
原 大介 豊田工業大学, 工学部, 教授 (00329822)
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Keywords | 言語学 / 日本手話 / 中間型手話 / 日本語対応手話 / 媒介手話 |
Research Abstract |
平成23年度に撮影・記録を行った手話動画データの解析作業を進めた。中間型手話使用者(媒介手話H使用者:中間型手話のうち聴者が使用する手話)と日本手話使用者が一定のテーマに従い自由会話をしている動画データおよび両タイプの手話使用者が語のみを単独で表出しているデータを使い、ELANと呼ばれる動画解析ツールを用いて、「繰り返し動作により表される語」を抽出し、それらに含まれる以下のような時間的成分の取り出し、測定を試みた。 ・繰り返しの回数(総時間数) ・繰り返しの単位となっている各ストロークの所要時間 ・各ストロークの往路と復路のそれぞれの所要時間 これらの測定結果を分析した結果、中間型手話(媒介手話H)と日本手話は、各ストロークの表出時間およびストローク中の往路と復路の所要時間比に有意な違いがあることが明かとなった。さらに、平成23年度に撮影・録画した手話動画データを観察した結果、中間型手話(媒介手話H)使用者と日本手話使用者において、一致動詞(主語や目的語の人称や数により形を変える動詞)の使用方法に違いがある可能性が見いだされたため、両タイプの手話において一致動詞がどのように屈折しているか(またはしていないか)を調べることとし、研究協力者3名と今後の調査方法の詳細について打ち合わせを行った。また、中間型手話(媒介手話H)と日本手話には、文末に現れる指差しの使用方法に関しても違いがある可能性が見いだされたため、その詳細を明らかにすることを目的として、日本手話話者1名に研究協力を依頼し、文末に指差しが現れる日本手話文を比較対象用データとして撮影・記録を行った。また中間型手話(媒介手話H)使用者が対象物を表す際に、handling CLとinstrumental CLのどちらを使用するかを分析した。日本手話における分類辞使用状況との比較対照・考察を残すのみの段階まで来ている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
手話動画解析ツールELANの使用方法を厚生労働大臣認定の手話通訳士5名に指導し、解析作業を行えるレベルまで使用法を習得してもらったのち、日本手話話者と中間型手話(媒介手話H)使用者が表す手話動画データの解析作業を行った。平成24年度に予定していた手話会話データ撮影作業(日本手話使用者同士の会話データ、および日本手話使用者(この場合媒介手話D使用者)と聴者(この場合媒介手話H使用者)の会話のデータの収集)は平成23年度に既に完了しており、24年度は動画データの解析作業を中心におこなった。交付申請書では、(1)非手指動作、(2)リズム・プロソディ、(3)動詞の屈折、(4)名詞句の修飾方法、(5)分類辞の特徴を解析する予定であった。このうち、リズム・プロソディは日本手話および中間型手話(媒介手話H)に関しては完了し、中間型手話(媒介手話H)の特徴の一部を明らかにすることができた。また分類辞の特徴に関しても、媒介手話H使用者が、取り扱い分類辞と道具分類辞のどちらを使う傾向にあるかの調査を完了した。動詞屈折に関しては、調査項目をリストアップし研究協力者に指示するところまで完了している。非手指動作と名詞の修飾方法の調査には着手していない。その原因として、解析作業を行える研究協力者を必要人数確保できないこと、および解析作業が当初の想定よりもかなり時間がかかる作業であることがあげられる。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)手話動画データを使い、動詞の屈折、CLの使用法、非手指動作の使用方法、名詞句の修飾方法(関係節の特徴)を中心に、中間型手話(媒介手話)の特徴を日本手話と比較しながら明らかにしていく。 (2)「日本における中間型手話の言語的特徴」をまとめ、成果報告を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度使用額(96,830円)の多くは、会話データの動画解析作業が遅れたために生じた未執行分の人件費である。次年度使用額分は、手話動画解析作業の人件費、CLおよび指差し動作調査のための追加データ収集に充てられる。以下、平成25年度の予算執行予定である。 物品費 0円、旅費 400,000円、人件費・謝金 196,830円、その他 0円、合計596,830円
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Research Products
(2 results)