2011 Fiscal Year Research-status Report
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23520564
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Research Institution | Maebashi Kyoai Gakuen College |
Principal Investigator |
佐藤 高司 共愛学園前橋国際大学, 国際社会学部, 教授 (80390409)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | ベイ表現 / 動態 / 北関東 |
Research Abstract |
研究予定にある調査を実施しつつ,日本語学会2011年度春季大会において,口頭発表「群馬県方言におけるベーの動態―若年層に対する30年間の経年調査から―」を行った。 発表の結論は次の(1)~(3)である。(1)意志・勧誘のベーでは,1980年~1992年に,接続の単純化という助詞化が進み,男子若年層では新方言ンベーが発生し広まる傾向が見られた。新方言ンベーは,撥音を多用する群馬県方言の音声的特徴を背景にル語尾動詞のルの撥音化を介して生じたと考えられる。1992年~現在では,ベーの使用が減少傾向にあるが,ベーの助詞化は進行中である。(2)推量のベーでは,1980年~1992年に,意志・勧誘で生じた新方言のンベーの影響を受け,推量のンベーも使用を伸ばした。1992年~現在では,意志・勧誘と同様にベーの使用が減少傾向にあるものの,推量のダンベーからベーへの切り替えと動詞や形容詞への単純接続は進行中である。(3)1992年~現在の新たな動きとして,女子若年層がベーを男子若年層よりも多く使用する傾向が見られた。男性方言と考えられてきたべーが,共通語化と2005年前後の女子若年層での方言ブームとを背景に,方言の「アクセサリー化」(「スタイル」として包括的な変種ではなく「要素」として使用される)として女子においても使用されるようになったと考えられる。また,これは,ベーを表現のバリエーションを広げたり楽しんだりするためのツールとして使用する方言の「おもちゃ化」としても捉えることができる。 群馬県方言におけるベーは,衰退傾向を示しつつも,共通語化にあらがい群馬県方言の中に根強く生き続けている。それには,新方言ンベーの発生や助詞化,推量のダンベーからべーへの切り替えと接続の単純化,「アクセサリー化」や「おもちゃ化」など,形式面・文体面で様々な変化を活発に起こしてきたことが大きいと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究1年目の主な研究予定内容は次の3点である。(1)調査項目の検討及び調査票の作成。(2)若年層での調査,データ入力,整理。(3)高年層での調査。 (1)及び(2)は予定通り終了し、(3)は調査依頼途中の段階である。(3)の高年層調査の実施については,平成24年度の早い段階で予定している。 これらに加えて,上記「研究実績の概要」で報告した通り,日本語学会で発表の機会をいただき、若年層のベーの動態について報告することができた。これは当初の研究予定にはなかったことで,プラスαの実績である。 以上のことから,研究予定内容の(3)にやや遅れがみられるものの,ほぼ順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度の研究予定は,次の4点である。(1)若年層の追加調査,データ入力及び調査結果分析。(2)高年層の面接調査。(3)中年層の調査依頼,調査実施,データ入力,調査結果分析。(4)『LAJ』『GAJ』『関東地方域方言事象分布地図』等の文献研究及び調査結果の統合。 平成25年度の研究予定は,調査結果と文献研究による課題の検討及び研究成果報告の作成である。 これらについても予定通り推進したい。なお,当初,中年層に関しては面接調査を予定していたが,事業所による協力を模索し協力が得られる見通しがたった場合には,多人数調査に切り替えることも視野に入れ検討したい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度の研究費の使用計画は,次のとおりである。ノートPC(90,000円),研究関係図書資料(100,000円),文房具・PC周辺機器(20,000円),研究旅費(90,000円),調査旅費(100,000円)。
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