2011 Fiscal Year Research-status Report
関連性理論に基づいた日・英語のイディオム解釈に関する認知的研究
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23520577
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Research Institution | Gunma University |
Principal Investigator |
井門 亮 群馬大学, 社会情報学部, 准教授 (90334086)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 関連性理論 / アドホック概念 |
Research Abstract |
本研究の目的は、日・英語のイディオム解釈の仕組みについて、関連性理論の観点から認知的分析を試みることにある。そして、字義通りの意味から離れたイディオムの意味が、聞き手によっていかに解釈されるのか、関連性理論における「アドホック概念形成」の枠組みを援用して検討する予定である。この研究目的を達成するため、研究実施計画に沿って平成23年度は、(1)関連性理論・イディオム分析に関する最新の言語理論の確認と研究調査、及び(2)日・英語のイディオムの用例収集と分類を中心に研究を進める計画であった。 上記の(1)については、岡田聡宏・井門亮 (2012)「アドホック概念:仕組みと可能性」松島正一(編)『ヘルメスたちの饗宴―英語英米文学論文集』661-695, 東京:音羽書房鶴見書店. 及び、井門亮 (2012)「イディオム解釈とアドホック概念」『言語・文化・社会』第10号, 1-15, 学習院大学外国語教育研究センター. の2本の論文にその成果をまとめた。これらの論文の中で、関連性理論におけるこれまでの語彙概念解釈に関する研究と、アドホック概念を援用したイディオム分析の先行研究である、Vega Moreno (2001, 2003, 2005, 2007) についてまとめを行った。さらに、Vega Morenoによる分析では説明が困難な日本語のイディオム解釈の事例を指摘し、その代案を提示するとともに、今後の検討課題についても言及をした。(2)については、上記の2本の論文を執筆するにあたり、日本語のイディオムの用例を中心に、収集及び分類を行った。 平成23年度に行った研究により、関連性の原理に沿ったアドホック概念形成という推論作業が、これまでの分析で明らかにされてきた「語レベル」の解釈のみに適用されるのではなく、イディオムといった「句レベル」にも適用できるということが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成23年度には、(1)関連性理論・イディオム分析に関する最新の言語理論の確認と研究調査、及び(2)日・英語のイディオムの用例収集と分類の実施を計画していた。 (1)については、関連性理論の枠組みでのこれまでの語彙概念解釈の議論を確認するとともに、アドホック概念に基づいたVega Moreno (2001, 2003, 2005, 2007) のイディオム分析の確認と問題点や反例などの考察を行い、ある程度達成ができたと考えている。しかし、関連性理論以外の語用論や意味論・統語論などの各分野におけるイディオム分析に関する先行研究の情報を収集・検討するという点については、十分な実施ができなかった。(2)については、日本語のイディオムの用例を中心に収集・分類を行ったが、英語の用例については、十分な実施ができなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度は、平成23年度に十分に実施できなかった、イディオムの用例収集と分類について、特に英語の用例を中心に前後の文脈も考慮に入れて収集し、さらに、収集した用例を「分解可能性」「凍結性」といった観点から分類を行っていきたいと考えている。そしてその分類結果から、イディオムの解釈について、関連性理論で提案されているアドホック概念形成の観点から具体的に考察を行う予定である。さらにその考察結果に基づき、アドホック概念形成に基づく語用論的解釈過程に、先行研究における「分解可能性」「凍結性」といった意味論・統語論的概念を融合させて、イディオム解釈に関する新たな認知的モデルを構築する。そして、その分析から得られた研究成果を論文にまとめ、国内学会の年次大会において研究成果を報告する予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度への繰越が生じた状況(理由)としては、次の2点が挙げられる。まず、平成23年度内に出版が予定されていた書籍(洋書)を数冊注文していたが、年度末になって、それらの書籍の出版が次年度に延びたことが判明し、注文を取り消したことが影響している。さらに、旅費として、調査・研究のための国内外の学会参加を予定し、参加する学会の探索を行ったが、予想に反して本研究と直接関係のある発表やシンポジウムなどが行われる学会が平成23年度にはあまり開催されていなかったため、当初計画していた学会の参加を取りやめたためである。 平成24年度の研究費については、交付申請書に記載した通り、図書費と旅費を中心に使用する予定である。その際には、平成23年度に購入出来なかった書籍を購入するとともに、可能な限り本研究に関係する学会に出席する予定である。 図書については、関連性理論を中心とした語用論関係の書籍や、イディオム関係の資料を充実させて、各分野における最新の研究動向、及び先行研究を調査確認するとともに、分析対象となる用例を収集するために活用する。さらに語用論だけではなく、多角的な視点から分析を行うため、本研究の隣接分野である意味論・統語論関係の書籍も充実させていく予定である。 旅費については、本研究に関連する学会の年次大会に出席して研究動向の調査をするとともに、これらの学会において研究発表を行なって研究成果を公表し、国内・国外の研究者と意見交換を行なう予定である。
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