2012 Fiscal Year Research-status Report
統語論と形態論のインターフェイスの研究 ― N‐A形容詞句
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23520601
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Research Institution | Konan University |
Principal Investigator |
有村 兼彬 甲南大学, 文学部, 教授 (70068146)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高橋 勝忠 京都女子大学, 文学部, 教授 (70140796)
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Keywords | NA形容詞 / 分離形態論 / 主要部移動 / 複合語形成 / c統御 / パラメーター |
Research Abstract |
有村は、24年4月に甲南大学文学部英語英米文学科に着任したNigel Gordon Duffield氏と折に触れて議論することができた。その過程において、語レベル内において統語論あるいは統語論の原理が作用するという仮定、最近の用語を用いると「分離形態論」が妥当であるとの確証を得ることができ、現在その理論の細部に関する問題点を検討中である。特に、英語におけるNA形容詞がどれほどの範囲において許容されるのか検討している最中である。一方、高橋は、マンチェスターのサルフォード大学において開催された「2012年度イギリス言語学会 (LAGB) (9月5日(水)~8日(土))」に会員として参加し、意見交換を行った。9月5日はMark Bakerの講演があり、講演後、格(case)を支配するc-統御 (c-command relation) (cf. Reinhart (1976)) そのものの概念が何故、格を論じるのに必要なのかを質問してみたが、構造が格を支配するのであってその理由は分からないがパラメーターの値を指定することにより世界の言語の格を決定できるとの回答をもらった。その他、Dr. Hans Van de Koot (UCLA)、宗宮喜代子(前東京外国語大学教授)と、語彙と形態に関して意見を交換する機会をもった。資料調査に関してはエセックス大学を訪問し、「N-A形容詞を含む形容詞の形態論的研究」関連の論文を入手した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
有村は、主としてspecies specificの形式をしたいわゆる「NA形容詞」の形式上あるいは意味上の特性を考察し、それを生成文法理論の中でどのように位置付けるかを検討している最中である。理論的な問題はほぼ目処がついたと考えられる。一方で、極めて異様な形式をしたこの種の形容詞が英語使用の場においてどの程度生産的であるのか、あるいはないのか、興味ある問題であるが、この点については次年度集中的に調査しなければ行けない問題と思っている。一方、高橋は本年度日本語の「~っぽい」「~っぽさ」についての具体的な接尾辞の事例を収集し、それらの先行研究を読み、どのような分析がなされ、英語の-ish, -nessの派生語との関係についてどのような比較が可能かについて検討した。形態と意味に関するアプローチにおいて歴史的な事実を踏まえることにより日英語の認知的共通性が見られることや、「~っぽい」の拡張表現が接尾辞から助動詞的な捉え方に変化していることなどについては実際以上に把握できたが、辞書における記述として語彙を形態的緊密性に基づく扱いだけではなくて、統語的な編入も「~中」接尾辞については必要であり、レキシコンの捉え方に関しては影山(1993)によるアプローチを検証しながら今後の研究に委ねたい。
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Strategy for Future Research Activity |
N-A形容詞例えばspecies specificという表現は[1] the species specific propertyのように限定的に用いることができるが、これは、[2] the property (that is) specific to the speciesという叙述形容詞に対応する。問題は[1], [2]をどのように関連付けるか、もしそれが可能であるとするならば、どのようなメカニズムによって関連付けるかという問題に帰着する。現段階で想定していることは、[2]に類似した基底構造を想定し、specificの補部speciesが主要部移動によってAPの主要部であるspecificに付加されるものと考えられる。この構造において形容詞の前の名詞は非特定的な解釈しか許さないという特徴があるが、NA形容詞のNはNPの主要部NであってDPを形成しないと想定することで無理なく説明できる。一方、高橋は、語形成過程における一般条件(名詞範疇条件(NCC)と形容詞範疇条件(ACC))が、英語の派生語だけでなく日本語の派生語・複合語の派生においても有効な形態論的条件であることを検証する。具体的には日本語の「~ぽい」とN-ish, A-ishの意味的・形態的関係(「白っぽい」「*白色っぽい」「荒っぽい」「*悲しいっぽい」とdoggish, youngish, *youngishness, *youngishly)、「~中」(ちゅう)(じゅう)に見られる連濁と構造と意味の関係(「午前中」「一日中」「町中」「空気中」「研究中」)、漢語・和語の複合語に見られる動名詞(Verbal Noun)とスルの関係(「教育する」「再教育する」「*英語教育する」「里帰りする」「墓参りする」「*里参りする」「*墓帰りする」)などについて考察を深め語彙化、意味拡張、認知意味論上の意義などとの関連を探る。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
昨年度、有村は海外出張を予定していたが、校務の都合で行けなくなったために残額が生じ、高橋も発注していた書籍が期限内に届かなかったこともあって残額が生じた。有村・高橋ともに平成25年度分の研究費と平成24年度の残額を合わせて本研究のまとめに当りたい。両名ともにこれまでの研究を論文にまとめ発表することになるが、それに加えて関係する領域の専門家を招いて講演会を開催する予定である。研究費の使用に関して特にロンドン大学(SOAS)において催される「2013年度イギリス言語学会(LAGB) (8月28日(水)~31日(土))」への参加を挙げておきたい。今回はComparative Morphology and Morphological Theoryのワークショップがあり、研究テーマと直接関わる内容も一部含まれる。
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Research Products
(2 results)