2011 Fiscal Year Research-status Report
パーソナル・テリトリーとポライトネス・ストラテジーに関する日韓中対照研究
Project/Area Number |
23520610
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
許 明子 筑波大学, 人文社会系, 准教授 (10322611)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
関崎 博紀 筑波大学, 人文社会系, 助教 (30512850)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | コミュニケーション・スタイル / パーソナル・テリトリー / 丁寧さ / 日韓中対照研究 / 談話分析 |
Research Abstract |
日本語母語話者、韓国語母語話者、中国語母語話者の間には聞き手の私的領域にかかわる項目について言及するかしないかの意識に違いが存在しており、それが韓国人・中国人日本語学習者の日本語によるコミュニケーションに支障をきたすことがある。本研究課題では、筑波大学で学んでいる日本人学生および韓国人、中国人日本語学習者が上下関係、親疎関係が明確な相手に対してパーソナル・テリトリー(以下、PT)に関する内容を言及するかしないか、また言及する場合はどのような表現を用いるかについて調査し、分析を行った。その結果、日本人、韓国人、中国人のPTの段階性には共通点と相違点が存在していることがわかった。まず、日韓中3者間の共通点として、先生に対する発話の最も中心部には「給料」が位置し、最も周辺部には「所有物」が位置していることがわかった。一方、3者間の相違点として、「外見」は日本人には中心部に、韓国人には周辺部に、中国人には中間部分に位置していることが分かった。また、能力の一部について言及する「英語力」に関する質問は韓国人では中心部に位置していることが分かった。同年代の初対面に対する発話では、韓国人の「年齢」が最も周辺部に位置し、日本人の「外見」が最も中心部に位置していることがわかった。韓国人日本語学習者の場合、初対面の相手とコミュニケーション・スタイルを決める際に「年齢」が重要な要因であると推測できる。また、日本人は「外見」に関する言及を避け、所有物に関する言及を通してコミュニケーションのきっかけを作っていることがわかる。 以上のように、日本語、韓国語、中国語の間にはPTの段階性に類似点と相違点が混在しており、丁寧さにも深い関係があることが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、日本国内で日本語を学んでいる韓国人、中国人日本語学習者および、韓国内、中国内で日本語を学んでいる学習者を対象に調査研究を行い、3者のコミュニケーション・スタイルの相違点、共通点について比較分析を行うことを目的としている。日本語学習者の場合、日本に来日して日本国内で日本語を学ぶ場合と、母国で日本語を学ぶ場合とは異なるコミュニケーション・スタイルの特徴を有しているのではないかと予測される。本研究では、日本語学習者のコミュニケーション・スタイルについて日本国内で学んでいる学習者と、母国で学んでいる学習者を比較することによって、学習者の母語の干渉によるコミュニケーション・スタイルの相違と、変化について分析する計画である。23年度は、日本国内で日本語を学んでいる学生の特徴を探るために、筑波大学で学んでいる日本人大学生、韓国人日本語学習者、中国人日本語学習者を対象に調整を実施し、分析を行った。また、中国内の日本語学習者のパーソナル・テリトリーの段階性について、中国大連外国語大学に在学中の日本語学習者150名を対象に調査を実施し、現在分析を行っている。また、韓国の場合、韓国外国語大学で日本語を学んでいる学習者100名を対象に調査を実施し、分析に取り掛かっているところである。23年度は日本国内で学んでいる日本語学習者および日本人母語話者を対象とした調査を実施分析を行い、日韓中3者間のPTの段階性と、共通点、相違点を明確にすることができた。来年度以降は引き続き、調査対象を増やしながら、中国内、韓国内で日本語を学んでいる学習者について分析を行う予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
H24年度は韓国内、中国内で日本語を学んでいる学習者を対象に調査を追加的に実施し、分析することがもっとも重要な課題である。日本語母語話者との比較、日本国内で日本語を学んでいる学習者との比較を通して、日本語学習者のパーソナル・テリトリーの段階性、コミュニケーション・スタイルの特徴について分析を行う。中国内の日本語学習者については、H23年度に中国大連外国語大学に在籍している学習者を対象に調査を行ったが、H24年度には北京外国語大学で日本語を学んでいる学生にも調査を行う予定である。また、韓国人日本語学習者は韓国外国語大学(ソウル)および釜山外国語大学(釜山)で日本語を専門として学んでいる学習者を対象に調査を実施する予定である。日本国内で学んでいる日中の日本語学習者とそれぞれの現地で日本語を学んでいる学習者の間の共通点、相違点について比較を行う予定である。本研究の成果を日本国内の日本語教育現場に提供することによって、外国人日本語学習者と日本語母語話者の間の円滑なコミュニケーション活動のための相互理解を提案したい。また、外国で日本語を学んでいる学習者に対しては、日本人のコミュニケーション・スタイルを理解させることによって、効果的な日本語の学習を支援していきたいと考えている。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
H23年度に実施した中国国内で日本語を学んでいる学習者を対象とするアンケート調査は、当初は研究代表者が訪中し、実施する予定であったが、大連外国語大学に在職中の姚艶玲氏の協力を得て、アンケート用紙の郵送による調査を実施することができた。H24年度はH23年度の実施したアンケート調査の分析結果に基づいて、中国人学習者を対象に丁寧さに対するインタビュー調査を行う予定である。そのため、H23年度に旅費として支払要求を予定していた研究費はH24年度に実施する予定である。H24年度は、韓国国内、中国国内において追加調査を実施するとともに、学習者を対象とした丁寧さに関するインタビュー調査も同時に実施する予定である。調査の実施、データ入力に研究費の支払を要求する予定である。また、研究補助として調査した内容のデータ入力を依頼する予定である。分析の結果、明らかになったことは、社会言語科学研究大会、および日本語教育研究大会にて研究発表を行う予定である。
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Research Products
(3 results)