2011 Fiscal Year Research-status Report
日本生育外国人児童のリテラシー発達に関する基礎研究―日本語作文の縦断調査―
Project/Area Number |
23520615
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Research Institution | Tokyo Gakugei University |
Principal Investigator |
齋藤 ひろみ 東京学芸大学, 教育学部, 教授 (50334462)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
森 篤嗣 帝塚山大学, 現代生活科学部, 准教授 (30407209)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 外国人児童生徒 / リテラシー / 日本生育 / 作文分析 / 縦断研究 / 縦断研究 / 出来事作文 |
Research Abstract |
1.平成23年5月、平成24年3月に研究会を開催し、本研究の枠組み、研究課題およびデータ分析の方法について検討し、共有化を図った。2.日本生育外国人児童生徒が多数在籍する小学校から得た2008年度から2011年度までの約600件の作文データのデジタル化を行い、分析ソフトによる分析のための基礎データを作成した。3.(1)日本語リーダビリティ測定(Ver.0.5.0-UD)と(2)KHCorderの分析ソフトによる分析を実施した(継続中)。(1)により、外国人児童と日本児童の作文の特徴を、文字数、文数、1文あたりの文節数、複文数により数量的に把握した。その結果、2011年の作文の横断的分析の結果から、日本生育外国人児童の作文は、量的にみると、低学年段階では長さおよび複雑さにおいて日本人児童の作文に比べて劣るが、中学年(3,4年生)ごろにはほぼ同等となる。高学年では、ほとんど違いが見られないが、複文数とその複文中の述語数において日本人児童との違いがある。また、4年間の作文を縦断的に分析した結果においても同様の結果が見られた。(2)により、作文で使用されている語彙の数と種類について分析を進めている。(1)(2)の研究は、国内の外国人児童生徒の言語習得研究においてはいまだ見られず、その成果は、第二言語習得、バイリンガリズム、日本語教育の研究領域において、貴重なものである。4.データ提供先の学校に3の(1)の結果の報告を行った。外国人児童のリテラシー発達について、教育現場の教員の観察や経験による実践知を加味した考察を行っている。5.3の(1)(2)の分析結果に関し2学会にて発表を予定し、エントリーを行った。(日本語国際大会。2012年8月、名古屋大学にて開催。社会言語科学会、2012年9月東北大学にて開催)
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
1 データの分析作業に関しては、予定より多少の遅れが出ているが、デジタル化や2種類のソフトによる分析を進めており、その結果から、研究目的とする生育外国人児童生徒のリテラシーの作文量と語彙の側面での特徴が描けつつある。質的な分析については、思いの外データの処理に時間がかかっている。今後、平成24年度以降のデータも含めて分析を進めていく。2 データの収集については、拠点フィールドにおいては予定通り進められた。ただし、予定していた他のフィールドでのデータ収集については、平成24年度に実施することとした。これまで収集したデータのサンプルとしての限界を十分に周知したうえで、新たなデータを加えることによって、より複合的・重層的に、考察を行うことが可能である。3 内部の研究会による検討を通して、作文データの分析方法について、当初の予定以上に多角的な分析の枠組みを構築することができた。平成23年度は助成金の最終額の決定や配分次期が例年より遅かったため、総じて研究の進捗状況は当初の予定より遅れている。しかし、計画を立て直し取り組んでおり、今年度以降、十分にこの遅れは取り戻せる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度以降の進め方について、研究内容、スケジュール、成果の公表に分けて示す。 1.研究内容として、(1)作文データの収集:他の学校に依頼し、日本人児童の作文データの収集を行う。これまで収集した「出来事作文」の他、「意見文」の作文の収集を行う。(2)データ分析:従来のソフトによる分量・文の複雑さ、語彙の分析に加え、次の分析を進める。分析の対象は(1)誤りの分析(文字・表記、文法)(2)文構造の分析(ねじれ文を中心に)(3)結束生の分析(文と文の接続の関係性に見られる特徴)(4)文章構造と内容の分析である。観点として、(1)日本人児童と外国人児童の違い、(2)生活作文と意見文に見られる作文の特徴の違い、(3)滞日年数による作文発達、(4)発達段階によるリテラシーの発達の4点を立て考察を行う。2.スケジュールは、平成24年度には、データの収集(他の学校から、「意見文」作文)、文構造の分析(ねじれ文を中心に)と結束生の分析、日本語教育学会・社会言語科学会における研究発表を行う。平成25年度には、各分析結果の総合考察を行う。その観点は・日本生育外国人児童のリテラシー発達の特徴、日本人児童と日本生育外国人児童の作文に見られる発達の差異、出来事作文と意見文の特徴と学習言語能力の発達との関係である。 3.成果の公表を、日本語教育学会、社会言語科学会、第二言語習得研究会等において発表し、その後、学会誌等に積極的に投稿を行い、公表する。また、本科研プロジェクト主催で研究会を開催し、成果を広く伝達する。最終的には、研究成果をまとめて報告書を作成する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度は、主に、作文のデータ処理と分析のための補助員雇用に経費を利用する。その他、学会発表のための旅費、本科研プロジェクト研究会参加のための旅費、関連図書の購入、事務のための文具などによる支出を予定している。研究補助員の雇用に約60万円(5名×12万円)、学会発表のための旅費に約25万円(名古屋、仙台、北海道)、内部研究会への参加のための旅費に約5万、その他図書費と文具に約10万である。
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