2013 Fiscal Year Research-status Report
日本語学習者による助詞「は」の使用における言語転移
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23520628
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Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
蓮池 いずみ 関西大学, 国際教育センター, 留学生別科 特任常勤講師 (10599020)
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Keywords | 助詞「は」 / 主題卓越言語 / 主語卓越言語 / 言語転移 / 助詞選択ストラテジー / 英語母語話者 / 韓国語母語話者 / 中国語母語話者 |
Research Abstract |
H25年度には、助詞「は」の習得に関する新たなデータ収集を行った。データの内容及び主な分析結果は下記のとおりである。 1)データ:韓国語を母語とする日本語学習者(初級~中上級レベル)75名及び中国語を母語とする日本語学習者(初中級~上級レベル)51名に対して、以下の調査を行った。①絵を見て文を(提示された語を使用して)完成するテスト(筆記)。②助詞「は」「が」の選択テスト(筆記)。③①の問題における助詞「は」の使用に関する内省調査(中国語母語話者のみ)。 2)分析結果:文完成問題の回答を分析した結果、韓国語母語話者の多くが日本語母語話者と同様、場所名詞の後に「は」を使用している(例:3階では女の子が窓の外を見ています)のに対し、中国語母語話者には英語母語話者同様、人物を表す名詞の後に「は」を使用する(例:3階で女の子は窓の外を見ています)傾向が見られた。しかし、より産出の自由度の高いタスクで調査を行った蓮池(2007)では、中国語母語話者に「場所」にも「人物」にも「は」を使用する例(例:3階は女の子は窓の外を見ています)が見られたが、今回はほとんど観察されなかったことから、タスクの違いが助詞の産出に影響を与える可能性が示唆される結果となった。また、韓国語母語話者の場所を示す助詞「に」と「で」の使用に関しても分析した結果、全体的に「に」の過剰使用の傾向が見られると同時に、日本語能力の低いグループにおいて「脱落」や、「に」「で」以外の助詞の使用(へ、へに、へは、にの、のに等)も目立つという特徴があり、学習初期において、母語との混同及び簡略化現象が顕著に現れることが確認された。助詞選択テストと内省調査の結果については、現在分析中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
平成25年度中に中国にてデータを収集する予定であったが、平成25年9月より現在の所属先に赴任することが決まったことから、、予定を変更して現勤務先でデータ収集を行うことにした。そのため、平成25年度末までにデータ収集を終え、分析と成果発表を次年度に行うこととした。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに収集したデータの分析を終え、研究のまとめを行う。具体的には、助詞選択テストと内省調査の結果をグループ間で比較し、母語による違いの有無を分析する。また、文完成問題と助詞選択テストという産出の自由度が異なるタスクにおける助詞の使用の違いについても分析を行う。これらの分析を終えたうえで、研究成果をまとめ、学会等で発表する。平成26年度中に計2本の口頭発表と、3本の論文投稿を行う予定である。現在、8月に行われる国外での学会の口頭発表に応募中であり、さらに秋に行われる国内の学会へも応募を予定している。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度中に中国にて中国語母語話者のデータ収集を行う予定であったが、平成25年9月に現在の勤務先に赴任することが決まり、予定を変更して現勤務先でのデータ収集を行うことにした。このため、平成25年度中にデータ収集を終え、分析と成果発表を次年度に使用することとし、未使用額はその経費に使用することとしたい。 データ分析に必要な人件費や図書購入費、成果発表時に必要な旅費や出版の費用等に使用する計画である。
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