2011 Fiscal Year Research-status Report
中国語教育における「インプット処理指導」の応用研究
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23520656
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
劉 愛群 北海道大学, メディア・コミュニケーション研究院, 特任准教授 (60469145)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | アスペクト助詞「過」 / 認知的学習ストラテジー / 「把」構文 / インプット処理ストラテジー / 習得 / 誤用 |
Research Abstract |
平成23年度上半期においては、アスペクト助詞「過」の習得を中心に、先行文献を調べ、誤用分析を行った。その調査の内容は、アスペクト助詞「過」の意味と用法、教育文法中での扱い方、誤用の構成、認知的学習ストラテジーの影響及び文法指導の対策、である。さらに、「過」の習得をめぐって、文法性判断のテストを実施、調査結果を論文の形でまとめた。その論文では、学習者が如何に「過」の使用判断を行っているのか、語順を如何に処理しているのか、といった点に着目した。調査者は、学習者の彼らがどのように「過」を処理しているのかに関して、母語の干渉、言語項目の複雑さ、学習初期の「固定表現」方略などの影響の他に、「意味内容中心」の「インプット処理ストラテジー」が働いていることを述べた。 平成23年度下半期においては、「把」構文の習得をめぐって、先行文献を調べ、誤用分析を行った。「把」構文は、中国語文法、教授方法及び習得研究の中で最も議論された項目の一つである。この構文は、「処置」の意味を表すと言われるのが、意味機能や使用条件が複雑であり、複数の言語項目とも関わっている。誤用に関して、過剰使用と回避の他に、語順や関連言語項目の間違えが目立つ。引き続き、本研究では、「把」構文の習得に関して、「インプット処理ストラテジー」(学習者は文法項目や言語形式よりもまず内容もしくは意味を優先的に処理する傾向がある)の観点から検討する。 本研究では、「インプット処理」理論をベースに、認知心理学における「注意」、「処理」などの基本的概念を中国語習得の調査に導入した。教室指導では、いかに学習者の認知的処理ストラテジーに配慮して展開していくのか、という課題が生じることになる。この課題は平成24年度に扱う予定である。本研究は、学ぶ面と教える面という二つの側面に関して、認知的な角度から教授上の問題を解決することを試みるものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成23年度は、予定された二つの言語項目アスペクト助詞「過」と「把」構文の習得に関する先行文献調査、誤用分析を行った。さらに、「過」の習得をめぐって、文法性判断のテストを実施、調査データの整理、まとめの作業を行い、論文の形でまとめることができた。研究は、おおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
平成23年度に検討された学習者の認知的学習ストラテジー(「インプット処理ストラテジー」)に対し、教室指導(「インプット処理指導(PI)」)では何を行っていくべきかを検討していく。まず、二つの言語項目に関するPIの試案を作成し、現場の教師からのフィードバックを得て、修正を重ねながら最終案を作成する。次に、アスペクト助詞「過」、「把」構文の習得におけるPIの介入を行い、それぞれの結果を統計的処理・分析し、指導の効果を検証する。研究経過及び成果は、国内外の学会で発表する予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
<図書・資料費> 文献など必要な情報収集に関しては、近年「インプット処理指導」に関する研究が活発となり、これを含めて第二言語習得・教育研究の最新の動向を反映する関連文献や海外の中国語習得研究に関する文献の入手が重要である。これが、設備備品経費の中心となる。<旅費> 今年度の国内旅費としては、日本中国語教育学会全国大会、日本中国語学会全国大会などでの資料収集及び研究発表に当たる。海外旅費としては、今年度6月27日―29日中国で開催される国際学会(第10届国際漢語教学学術研討会)での研究発表(採択済み)に当たる。<謝金> 本年度は、教室で関連の文法指導やテストを行い、それぞれの結果に関する統計的処理・分析や指導効果の検証が中心となる。研究推進の効率を高めるため、資料整理やデータ処理などの作業を行ってもらう研究補助員(2名の予定)に対するものである。未使用額に関して、海外旅費(アメリカ中国語教師学会の年度大会に参加)として使用する予定だったが、この会議の開催時期は11月の学期中であり、飛行機の乗り継ぎを含む会議参加に必要の時間が長くなり、普段の教育本務に影響する恐れがある。そのため、平成23年度は学期中のアメリカの学会に参加しないことにした。次年度は、未使用額に関して、日本国内の学会や研究集会と海外の国際学会の旅費に充てて使用する予定である。
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Research Products
(2 results)