2011 Fiscal Year Research-status Report
英語による絵描写の文産出過程の解明とその支援に関する心理言語学的実験
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23520680
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Research Institution | Oita University |
Principal Investigator |
柳井 智彦 大分大学, 教育福祉科学部, 教授 (60136025)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 絵描写課題 / 言語産出 / プラニング範囲 / 心理言語学 / 英語教育 |
Research Abstract |
本研究の目的は,英語学習者が口頭で絵を描写するときの文産出のプロセスを心理言語学的実験によって検討し,教授・学習に寄与することである。初年度は計画どおり主語の名詞句に関して,発話開始までの時間(反応潜時)を手掛かりに実験を実施した。具体的には,パソコン上に縦に3枚の絵を配置し,(1)X is above Y and Z. または(2)X and Y are above Z. と描写させる。この時,主語が1語から成る場合((1))と2語から成る場合((2))の反応潜時を調べた。もし潜時に差がないならば,文は頭から1語ずつ立案(planning)されると考えられ,(2)の潜時が長ければX and Yというまとまりを単位として立案されると考えられる。結果は,(1)の方であった。すなわち英語学習者は主語名詞句の複雑性とは無関係に,初頭の名詞1語のみを立案する。この結果は,英語母語話者が(2)の立案を行うとする先行研究の結果と対照的である。なお,実験は心理実験用ソフトでコントロールし,反応潜時はボイスキーによって自動計測した。 上記に加えて,次の2項目を検証する実験を進行中である。1点目はX and Yという構造の場合,Yの立案の強度は本当にゼロか,の検証である。2点目は,X on Yといった修飾構造の場合はどのような立案となるかの検証である。その検証にはどちらかの名詞を直前に瞬間的に提示するというpreviewの技法を用いている。 学習者と母語話者とで文生成時のプロセスが大きく異なることなど,重要な成果を生みつつある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では参加者を個別に呼んで実験を実施するため,日程調整や人数の確保に苦労を伴う。本年度は参加者数がやや少なかった。実験結果は,外国語教育分野ではおそらく初めての事実の提示である。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は文産出のもう一つの要である動詞(とその目的語等)に関して,発話開始前のプラニングのプロセスを実験的に検証する。そのさい,有効性を確認しつつある手法(プラニングの範囲を推定するためのプレビュー手法,および錯乱肢による手法)を用いて,プロセスをより詳細に把握する。同時に,指導に有効にはたらくマルチメディアを使った訓練技法に関しても開発を開始する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度使用となる研究費は,研究の進行に伴い生じてきた, より有効なソフトウェア・実験機器の購入,及び実験データ収集・整理の充実のための謝金に充てたい。これに翌年度分を合わせて,次の課題である「動詞とプラニングの範囲」の実験を実施する。
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Research Products
(1 results)