2012 Fiscal Year Research-status Report
英語による絵描写の文産出過程の解明とその支援に関する心理言語学的実験
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23520680
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Research Institution | Oita University |
Principal Investigator |
柳井 智彦 大分大学, 教育福祉科学部, 教授 (60136025)
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Keywords | 言語産出 / 文のプラニング範囲 / 絵描写課題 / 心理言語学 / 英語教育 |
Research Abstract |
本研究の目的は,英語学習者が口頭で絵を描写するときの文産出のプロセスを心理言語学的実験によって検討し,教授・学習に寄与することである。2年度目である本年は,以下の2つの主語構造から成る文に関して実験を行った。 ①X and Y are red. (等位構造) ②X above Y is red. (後置修飾) 実験はこれらの文を示す絵を示し,発話開始までの時間(反応潜時)を計測するのであるが,絵を提示する直前にXまたはYの絵を‘preview’として瞬間提示し,‘preview’を示さない場合との反応潜時を比較する。発話開始前にXまたはYがプラニング処理されているならば,‘preview’の促進効果により,反応潜時は短いものになるはずである。結果は,①の等位構造の場合,Xのみがプラニング処理されるが,②の後置修飾の場合はXもYもプラニング処理されることが判明した。注目すべきは,②の後置修飾の場合,英語母語話者はYがプラニングされることはない(Allum and Wheeldon, 2009)のに対して,英語学習者は後置された修飾句内のYまでもがプラニングされることである。この現象には,日英語の語順の違いが関係していると推定される。 語順が異なる後置修飾構造を母語話者の思考順序のように発話するための訓練として,Mädebach et al. (2011) による‘degrading’という提示技術に注目しているが,効果の確認までには至っていない。 語順に関しては,文要素である述語と目的語の位置が日英語で逆転することが発話生成にどのような影響を及ぼすかを分析するために,新たな実験を開始している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
‘preview’を用いて行った実験研究は,全国英語教育学会のARELE誌に論文として掲載された。実験結果は,この分野ではおそらく初めての事実の提示である。なお,上記‘degrading’という提示技術の教育効果については確認に至っておらず,今後の課題とする。
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Strategy for Future Research Activity |
文の述語と目的語が発話開始前にどのようにプラニングされるかという課題について,すでに実験を開始しているが,次年度はキューとなる錯乱肢(distractor)にさらに工夫を加えて,検証結果を出す。また,本研究から導かれる教育的示唆をエビデンスを付けて提示したい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度使用となる研究費は,本年度よりも実験の精度を上げるためのハードウエア,効果的画像処理のためのソフト,実験実施に伴う謝金等に充てる。
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Research Products
(3 results)