2011 Fiscal Year Research-status Report
日本におけるマイノリティー言語に関する実態調査と言語支援開発
Project/Area Number |
23520706
|
Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
斎藤 早苗 東海大学, 文学部, 教授 (80298075)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
河原 俊昭 京都光華女子大学, 人文学部, 教授 (20204753)
高垣 俊之 尾道大学, 芸術文化学部, 教授 (60226743)
木村 麻衣子 武庫川女子大学短期大学部, 共通教育科, 講師 (30290414)
CAROLYN Wright 京都光華女子大学, 人文学部, 准教授 (60329943)
|
Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
|
Keywords | 言語的少数派 / 言語景観 / 言語支援・サービス / 言語権 / 法廷通訳 / 外国人住民 / 外国人集住都市 / ニューカマー |
Research Abstract |
当該年度に行った研究内容を本研究目的に基づいて次のように概観する。 本研究の目的は、日本在住の外国人が直面する言語関連の問題の現状を把握し、外国人住民のための言語支援対策を検討し、言語支援モデルを構築することである。この目的達成のため、当該年度では、文献調査、現地視察、学会発表、そして調査項目の検討と作成に取り組んだ。 実績として具体的には次の7点を挙げる。 (1)「マイノリティー言語」関連の文献調査 ([例] "Easy English"の概念と定義)、 (2)(1)の資料調査各自治体の外国人住民への言語支援に温度差を見る。結果,国籍や文化間の相違も考慮に入れた対策 を打ち出すことは必須であり、本研究推進の重要な位置づけとなった。( [例 1]福山市の外国人居住者に対する言語支援)、 (3) 外国人住民と市民によるフォーラム:福山市で開催された『多文化理解共生』と題した講演を聴講した。 (4) 韓国の言語支援の実情調査:2012年3月に韓国ソウル市内を訪問し、外国人向けの掲示を調査した。 (5) 日本言語政策学会緊急研究報告会:英語以外の言語の重要性を強調: 2011年11月に大修館書店の『英語教育』第60巻第10号で、大木充・西山教行編『マルチ言語宣言』の書評をした。(6) 日本言語政策学会緊急研究報告会: 2011年 5月、「災害・震災時、情報弱者のための言語政策について考える」『自治体の言語サービス』という題目で発表した。災害地の外国人市民への言語支援の提供について提言した。 (7) 調査項目の検討と作成 以上、当該年度の実績に関して、今まさに日本の社会が抱えている外国人住民への言語支援を促進していく上で、日本の言語支援対策づくりの一助として意義深い研究に膨らんでいくものと確信する。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の現在までの目的達成度の評価を「概ね順調に進展している」としたい。その理由として次の3つを挙げる。 一つ目は、アンケート調査項目の検討と作成である。国籍の異なる外国人を対象としているため、調査の対象者や目的に応じた質問事項を綿密に考案していくことが求められる。本研究のテーマでも示されているように『言語支援開発』という一理念が含まれており、"Easy English/Alternative English"とはという問いに直面するに至った。言語サービスが深く、そして広い意味を持っていることに今一度再考することになる。言語サービスを構築していく上で、"Easy English"を深く追求することができたことは本研究の根幹ともなる。二つ目は、文献基礎調査、資料の収集など各担当地域で速やかさには欠けるが、着実に行われ、進んでいることから概して目的が達成されていると判断する。事実、資料収集については地方独自の支援策を打ち出している所、あるいは何もされていない所など支援に対する理念にかなりの温度差があることが分かり、自治体、あるいは外国人住民との接点づくりに困難さを見出すという状況に遭う。この資料収集困難な現状にもひるまず、資料を十分とは言い難いが、研究を推進して行く上で必用不可欠な資料を収集できている。最後に、研究内容を外へ発信するため海外学会での研究発表に臨むことを目的のひとつとしてあるが、当発表を計画する過程において基礎的文献調査は発表内容の土台となる。この文献調査の結果、あらたに「言語支援」という課題を言語政策と言語的人権についての基本的概念から再考することができた。特に、上記のひとつ目の理由に触れた"Easy/Alternative English"についての議論は言語支援の使用言語という領域でさらなる追求が不可欠となる。 以上が目的達成の主な理由である。
|
Strategy for Future Research Activity |
以下の4つの推進方策に主眼を置き、本研究の内容を深め、充実化を図る。特に聞き取り調査で得られたデータ収集と解析を中心とし、効率的かつ綿密なデータ処理と分析が求められる。また、コミュニティーとの接点を築くことも本研究を促進する上で重要な柱となると考え、言語支援環境づくりにつながり得る次の4方策を整える。[推進方策] (1) 他言語によるアンケート調査票:言語政策的概念である「言語使用」は「言語支援」づくりのための重要な一理念と考える。よって、異なる対象者の使用言語の状況下では予め日本語、英語、中国語、そして韓国語版を作成し、社会的環境に応じた調査票を整える。 (2) 調査の分析と検証:アンケート調査・聞き取り調査のデータ収集と分析研究代表者と分担者一名がこのデータ収集と分析を受け持ち、分析の段階では全員で解析・検証に携わる。 (3) 海外での応用言語学会での発表: 2012年度末に開催予定のタイでの応用言語学会発表に臨む。中間報告ではあるが、今まで培ってきた研究過程を公表することで相対的に課題を考察し、改善点を見出し、本研究課題の知見の発展を目指す。究極的に、当学会テーマである"social inclusion"は、当該課題に関しての固定的概念を見直すためにも意義あるキーワードとして注視しても意義のある発表の場と考える。 (4)『フォーラム in Kyoto』:多文化共生と外国人住民のための言語支援』を企画する。この方法をとることから地域社会(コミュニティー)との接点を見出す機会づくりを目指すことができ、建設的な見地を生み出すことができるのではと判断し、基調講演者と市民を交えてのフォーラムを考案する。 以上、4つを推進方策として本研究活動を膨らましていく。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度研究費の使用については次の目的で計画をたてる。 (1)2012年12月に行われる海外(タイ国)での学会での学会発表のための旅費と学会参加費、(2)2012年6月9日・10日に開催される『日本言語政策学会』への参加費と旅費、(3)現場での聞き取り調査実施のためにかかる費用・インタビュー実施、アンケート配布にかかる費用(通信費など)・データ処理のための補助として携わる協力者および回答者への謝金、(4)"Forum in Kyoto"という題目の下にパネルディスカッションを含むフォーラムにかかる費用・施設使用料(・招待講演者への謝金・資料配布・広報活動費)、(5)中間報告としての報告書作成:これまでの研究の実施(中間)報告書を執筆し、提供する計画である。よって、報告書の印刷費が必用となる。尚、この中間報告書は100部の印刷を計画している。 (6)会議・打ち合わせ:本研究を推進していく際に会議・打ち合わせが必要となるが、演習室などの施設使用料や会議の際に求められる資料配布の際に発生するコピーにかかる費用をも考慮に入れ、研究費使用計画の一項目に含む。 以上の項目で次年度研究費を使用していく計画である。
|
Research Products
(1 results)