2012 Fiscal Year Research-status Report
日本におけるマイノリティー言語に関する実態調査と言語支援開発
Project/Area Number |
23520706
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
斎藤 早苗 東海大学, 文学部, 教授 (80298075)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
河原 俊昭 京都光華女子大学, 人文学部, 教授 (20204753)
高垣 俊之 尾道市立大学, 芸術文化学部, 教授 (60226743)
木村 麻衣子 武庫川女子大学短期大学部, 共通教育科, 講師 (30290414)
CAROLYN Wright 京都光華女子大学, 人文学部, 准教授 (60329943)
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Keywords | マイノリティー言語 / 言語支援 / 多言語・多文化社会 / 多文化共生 / 言語政策 / 母語保持教育 / やさしい英語・日本語 |
Research Abstract |
2012年度に実施した本研究の成果について、特に主要実績として2点挙げたい。一つ目は調査対象の地方都市における調査のデーター収集とその結果分析、そして、もう一つは国際学会で当該調査の結果を報告したことである。内訳はつぎのとおりである。 1. 2013年12月15日、タイ国・チェンマイで開催された国際学会で成果報告:多言語社会と言語政策の観点から(1) "a multilingual society"としての日本、(2)広島県福山市の言語支援についての現状、そして(3)兵庫県神戸市の言語支援についての取り組みと実態という3つの事例に焦点を当て、日常生活、さらに子供たちの教育という面での母語維持とアイデンティティーの重要性を提示した。他国の聴衆に「多言語・多文化社会の日本」を伝えることができたことは情報価値があると見る。また、多言語社会の日本の現況を示すことは言語教師をはじめ、教育に携わるひとたちが担う役割のひとつであることも認識できたことは意義深い。2. 言語支援の実態把握のための聞き取り調査及びアンケート調査によるデータ収集:特に、広島県と兵庫県に住む外国人居住者への言語支援の一事例として、神戸市における言語支援の取り組みについての実態を概ね把握することができ、本研究の究極的な目的である「言語支援開発」への重要な指針となる。さらに、これらの地方都市における言語支援の現状を考察することで「やさしい英語・日本語」への意識向上と「やさしい言語」に対する具体的な対応策を築きあげる切り口を見出すことができたことは意義深い。3. 京都府に在住する外国人への聴き取り調査実施: 在留外国人のうち、大学などが集積する大都市圏の都府県のひとつである京都府での本研究の調査対象が英語母語者が大半を占めるという結果を出している。子供たちに対する言語支援の重要性を見出すことができた点に注目したい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当該研究の目的の達成については概ね順調に進んでいると判断する。その理由を以下に示す。 理由のひとつ目は、 各地域(福山、神戸、京都、金沢)における聞き取り調査及びアンケート調査のデータ収集から分析へと経て、得られた結果の検証を着々と行っていることである。二つ目は、 各地域担当の研究分担者が各地域の地方自治体制による異なる支援対策・教育環境・文化によって独自の調査内容を築くことができるという方向性を見出していると言う点が挙げられる。次に、 聞き取り調査および地方自治体での観察による調査実施をすることで外国人居住者が抱える諸問題の実態を見出すことができたこと、次に、外国人居住者が直面する問題には 調査対象となったどの地方にも共通する問題と各地方の環境や政策(言語政策)によって異なる問題の存在を確認できてきたことである。例えば、共通点として医療に関する不安、隣人とのコミュニケーションに対する不安、地震などの緊急事態発生時の際の言語や子供の教育に関する不安があることが確認できている。その一方で、地方による特徴として、就業地という観点から見る生活に関するの問題を見出すことができた。一事例として、東京都豊島区にある中国人のコミュニティーに見る就業は「エスニック・ビジネス」として特徴づけられ、多くの中国人住民が抱える問題は仕事関係にあることが分かる。最後に、 本研究の各対象地方都市にも見られる共通問題として、デジタル化した情報交換が地方自治体の工夫と努力で開発されているものの、提供されている情報が「言語支援」として外国人居住者たちにしっかり行き届いていないという問題があるということを見出すことができた。 よって、上記の理由から、本研究の主要目的である「言語政策の実態の把握」についてデータの収集から結果に基づく考察を行うという点で、概ね目的を達成していると判断するに至った。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は当該研究の最終年度にあたるため、総まとめとした研究方策が必要となる。よって、次のような実施計画に注目した方策の基に研究を進めていく。 (1)各地域の担当している研究分担者による調査結果の解析の考察と提言、(2) 国外への日本の言語政策の実態についての告示(シンガポール、英国、そして韓国での国際学会で成果発表を計画)、(3)成果報告書作成から書籍の執筆へ、(4)本研究での実態調査と考察についての振り返り、(5)上記(4)の振り返りから得た反省点・課題を明確にし、さらなる言語支援開発に向けた方策を教育的、言語政策的提言、(6)「やさしい日本語・英語」の構築 の6点に注目した方策の基に本研究の推進を図る。 つまるところ、今までの研究・調査から分かったことのひとつに、言語支援とは相談窓口、ホームページ、情報誌などによる情報提供だけではないということが挙げられる。この度の調査で追求できなかった緊急事態への対応、司法通訳、日本語教育、外国人児童への母語保持教育などについての一層の現状把握、問題点の洗い出し、対応策の確認から対応することなどが求められる。また、外国人被験者数を増やした規模の大きな意識調査、各地域の日本人の意識調査、「やさしい英語」や「やさしい日本語」などの研修などもこれからの本研究で取り組むべき重要な課題となる。健全な多文化共生社会に資するためには言語支援の維持発展について広く深く調査・研究を推し進める必要があるとことを念頭に入れることが肝心であると見る。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度研究費の使用にあたり、次の4点を主な使用目的として計画する。1つ目は、海外での国際学会への参加の際に必用な費用、2つ目は、本研究の成果報告書の印刷費、3つ目は、打ち合わせ会議のためにかかる諸費用、そして4つ目として、本研究の調査に協力をしていただいた協力者(参加者)への謝礼金など、以上4点を主な使用目的として計画している。 具体的には、1つ目の目的である国際学会へ参加する際、発生する参加費や旅費に多くの費用がかかると見込まれる。次年度での発表計画はシンガポール、英国、そして韓国の釜山での国際学会での研究発表が含まれる。これら3件の学会参加にかかる費用を計画に含める。次に、次年度は成果報告書の作成を企画している。従って,作成した報告書の印刷費を見積もる必用がある。現時点では200部の報告書の印刷を予定している。そして3つ目の目的であるが、本研究を推進するにあたり、必用に応じて打ち合わせ会議の開催を計画している。よって、会議開催の際、必用となる施設使用量および資料収集代、研究分担者が地方に分散しているため京都を拠点とする開催地となることから発生する旅費を計画する必用がある。最後に、本研究調査への協力者(参加者)への謝金であるが、聞き取り調査をはじめ、アンケート調査、加えて、地方自治体の職員の方々なんど協力していただいた方々へ支払う謝金を計画する。以上の4点を主要使用目的として研究費を使用する計画である。
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Research Products
(7 results)