2012 Fiscal Year Research-status Report
アルメニア「祖国帰還」運動に見る民族アイデンティティの諸相
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23520790
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Research Institution | Tokyo University of Foreign Studies |
Principal Investigator |
吉村 貴之 東京外国語大学, アジア・アフリカ言語文化研究所, 研究員 (40401434)
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Keywords | アルメニア / ナショナリズム / 共産主義 / ディアスポラ / 旧ソ連 / 中東 |
Research Abstract |
本年度は海外出張の日程の都合上、元来26年度に計画していた「祖国帰還」運動によってアルメニアに移住した在外同胞についてソヴィエト・アルメニア政府がどのように処遇したかについての調査を前倒しして行った。 その結果、第二次大戦後の「祖国帰還」者が、ソヴィエト体制下で政治犯として捕えられ、シベリアで矯正労働を強いられたという政治的抑圧の事例は、スターリン存命中の6~7年間に限られることが分った。もっとも、フルシチョフ期に入っても、移住先から逃亡したり、ソ連外への再移住を希望したりする事例は後を絶たないが、むしろ「祖国」とはいえ、全く環境が違う移住先の生活になじめないなど、ソヴィエト政権の社会統合政策の失敗という要因も考慮する必要がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度はアルメニア共和国に1か月弱滞在して、アルメニア「祖国帰還」運動に関する文書館史料を収集し、昨年度の遅れを取り戻した。
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Strategy for Future Research Activity |
25年度は、昨年度隣国シリアの内戦を受けた政治混乱で入国を見合わせたレバノンのアルメニア系大学の図書館や史料館で、第二次大戦後の「祖国帰還」運動に対して、レバノンやシリアのアルメニア人社会がどのような態度を示したのかについて、現地の定期刊行物を通して考察する。 特に、ソヴィエト・アルメニアから亡命したアルメニア民族政党のダシュナク党が、当初「帰還」運動を支持しながら、突如方針転換し、運動に批判的になった事情について検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
今年度は、円安原油高のため、海外渡航の経費が昨年度よりもかさむことが予想されるたことに加え、これまでの研究成果を国内学会で発表するため、旅費が今年度執行額の8割近くを占める可能性がある。
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Research Products
(3 results)