2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23520794
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
黛 秋津 東京大学, 総合文化研究科, 准教授 (00451980)
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Keywords | 黒海 / ロシア / オスマン帝国 / 多国籍 / 東方問題 / 国際関係史 / 黒海通商 |
Research Abstract |
二年目にあたる今年度は前年度に引き続き、近代を中心にその前後の時期にも注意しながら黒海国際関係史に関する先行研究を収集して把握し、また政治外交・通商分野に関するロシア史、西欧史、オスマン史の最新の研究動向にも目を配り、関係文献を入手した。史料に関しては、今年度は主にロシア側の黒海進出に関する史料の収集を行い、国内では、いくつかの大学図書館において、近世ロシア・オスマン関係に関するマイクロフィルムや関連する論文を、さらに18-19世紀のロシア帝国の黒海政策や対ハプスブルク・オスマン外交政策などについての刊行史料を中心とする一次史料を収集し、これらの分析を進めた。そして秋にはウクライナのクリミアで現地調査を行った。18世紀後半のロシアの黒海進出において重要な位置を占めていたクリム・ハーン国の、特に末期に関する一次・二次史料を、シンフェローポリのクリミア・タタール図書館で調査し、またクリム・ハーン国史の専門家であるセルヴェル・エブベキーロフ氏にインタヴューを行って、様々な情報と新たな知見を得た。 これらの研究の結果、18世紀後半のロシアの対黒海政策が、黒海を取り巻くバルカン(特に18世紀後半から19世紀前半においては、現在のルーマニアを構成するワラキアとモルドヴァ)・クリミア・カフカースに対する政策と密接な関係を有していた事実が、外交史料の分析などを通じて改めて実証的に裏付けられ、バルカン史、クリミア史、カフカース史と当研究課題をどのように関連させて新たな地域史像を構築して行くかが大きな課題として浮かび上がった。このような視点をも踏まえつつ、近世から近代への移行期におけるバルカンのワラキアとモルドヴァをめぐるロシア、オスマン、西欧諸国間の政治外交関係を扱った論考を発表し、この課題に本格的に取り組む足掛かりを得ることが出来た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
予想以上に時間を要した先行研究文献の整理と把握についてはほぼ終了し、一次史料の収集と分析に集中できる段階に入った。これまで、オスマン帝国側史料の収集に予定したような時間が費やせなかったため、オスマン側の黒海政策の解明にやや遅れはあるものの、その代わりオーストリアやフランスなど西欧諸国の本研究課題に関する刊行史料を国内で十分収集することが出来た。また、黒海研究を行う研究者や研究機関とのネットワーク構築も進展し、一定の成果の発表も行っている。これらのことから概ね順調だと言える。
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Strategy for Future Research Activity |
先行研究文献の調査と収集は概ね終了したので、今後はこれらを踏まえたうえで、刊行されていない文書史料を中心とする一次史料の収集とその分析に全力を注ぐ。また、今後も黒海周辺地域の踏査を行い、近代黒海史研究者と彼らの所属する機関との関係構築を目指す。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
西欧諸国側未刊行史料の調査と収集のためのロンドン・パリ・ウィーン滞在、そしてカフカース諸国における黒海研究に関する研究状況把握のための踏査など、主に海外旅費に使用する。その他、引き続き本研究課題関連文献の購入にも一定額を費やす予定である。
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Research Products
(2 results)