2011 Fiscal Year Research-status Report
近世日本における自然資源の利用と管理に関する歴史学的研究
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23520803
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture and Technology |
Principal Investigator |
高橋 美貴 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (90282970)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 自然資源の利用と管理 / 近世・近代日本 / 明治期県庁文書 / 豆州内浦 / 資源保全 / 環境史研究 |
Research Abstract |
本研究の目的は、日本の近世社会を主な事例として、自然資源の利用と管理に関する歴史学的研究を行うことである。具体的には、(1)特定フィールドを設定して資源変動と地域の生業・社会の対応を事例に則して掘り下げる地域史研究の作業と、(2)全国各地に明治期の行政文書として残されている、伝統的生業の技術や技能・慣行などに関する調査資料の概要調査とデータ収集、という二つの作業を進めることを計画した。本年度の作業概要は以下のようなものである。1、(1)に関わる作業としては、伊豆国君澤郡内浦地域の史料群を素材として活字化された『豆州内浦漁民史料』(全三冊)のデータベース化を進め、おおむね終えることができた。2、(2)に関わる作業としては、8月8~11日および3月15~18日に愛媛県庁文書(愛媛県立図書館所蔵)、12月26~27日および3月22~24日に滋賀県庁文書(滋賀県庁県政資料室蔵)、3月7~10日に山口県庁文書(山口県文書館所蔵)の史料撮影を行った。いずれも撮影を終えることができた史料の量は、当初予定していたものの6~8割程度となっている。3、これとは別に、東北地方で発掘が進んでいる山林・海川関連資料の閲覧および撮影を、11月22~24日に阿仁町で(こちらは史料閲覧のみ)、3月29~30日に東北大学防災科学研究拠点にて行った。4、本科研に関わる論文として、「漁業史研究と水産資源変動ー資源保全史の再考から環境史研究へー」を論集論文として執筆した(刊行は2012年度内予定)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
(1)特定フィールドを設定して資源変動と地域の生業・社会の対応を事例に則して掘り下げる地域史研究の作業と、(2)全国各地に明治期の行政文書として残されている、伝統的生業の技術や技能・慣行などに関する調査資料の概要調査とデータ収集、という二つの作業課題について、(1)については豆州内浦を事例とした史料分析データの収集に一定の目処をつけ、また(2)については、漁業に関わる史料に限定はされているものの、愛媛県・滋賀県・山口県を対象として一定量の画像データを収集することができたため。また、残念ながら論文の発表に至らなかったが、論文原稿自体は提出済みの成果が一本あり、2012年度内に公表予定となっている。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、本年度に引きつづき、(1)特定フィールドを設定して資源変動と地域の生業・社会の対応を事例に則して掘り下げる地域史研究の作業と、(2)全国各地に明治期の行政文書として残されている、伝統的生業の技術や技能・慣行などに関する調査資料の概要調査とデータ収集、という二つの作業課題を継続する。 (1)については、豆州内浦を拠点とした史料分析データの収集に一定の目処がついたため、そのデータを用いた分析的検討や立論に作業を進めることができれば、と考えている。 (2)については、本年度調査を行った愛媛県・滋賀県・山口県の未撮影史料の撮影のほか、できれば県庁文書を残している他府県を対象とした調査を進めたい。現段階で調査を予定しているのは宮崎県、これから調査先に加えることを検討したいと考えているのが長崎県と島根県である。 一方で、問題点としては、とくに(2)の作業について、画像データの収集で手一杯となり、史料の分析に十分な時間と労力とを投入しえていないことである。(2)の調査は継続するが、その史料分析とデータ化の作業を進めうるか否か、進行状況を勘案しつつ次年度の計画を再検討したいと考えている。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
ひとつは、前述した(1)・(2)の二つ作業のうち、(2)の作業(全国各地に明治期の行政文書として残されている、伝統的生業の技術や技能・慣行などに関する調査資料の概要調査とデータ収集)を行うための旅費支出がひとつの柱となる。授業のない夏季および冬季・春季を利用して、年3~4回ほどの調査を行いたいと考えている。新たな調査対象地としてすでに準備を進めているのは宮崎県であるが、これ以外に、昨年度の調査で未撮影史料を残している愛媛県・滋賀県・山口県各県庁文書の撮影も合わせて進めたい。また、可能であれば、島根県・長崎県各庁文書の調査も本年度新たに着手することができたら、と考えている(難しければ来年度に回すこともありうる)。 いまひとつは、自然資源の利用と管理に関わる研究の一環として、山林資源に関する資料の収集にも着手することができれば、と考えている。そのための資料として、『日本林政史資料』の購入を検討している。ただし、『日本林制史資料』は古書購入のみ可能であり、全冊揃で最低でも60万円と高額であるため、本科研予算では購入が難しいかもしれない。調査旅費とのバランスを検討のうえで購入可否を判断したいと考えている。
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