2011 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23520807
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Research Institution | University of Yamanashi |
Principal Investigator |
大隅 清陽 山梨大学, 教育人間科学部, 教授 (80252378)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 古代交通 / 駅制 / 地域社会 / 廐牧令 |
Research Abstract |
初年度である平成23年度には、甲斐を中心とする中部山岳地域における内陸交通の様相を解明することを計画し、共著書1点、論文1点、学会報告4点の成果を得た。 報告「中部山岳地域における駅制と地域社会」では、東海道神坂峠を挟む美濃・信濃両国の駅制運営の特色を文献から検討し、強制的な人口移動による駅戸集団の形成や維持に見られるように、国郡制による駅制運営が地域社会のあり方に影響を及す様相を明らかにした。さらに甲斐国の御坂峠の駅について検討し、8世紀後半以降、国中(甲府盆地)から御坂路を擁する都留郡南部に人とモノの移動が起こり、地域の開発が進むこと、特に河口駅とその周辺は、都留郡ではなく峠の反対側にあたる八代郡の勢力により開発・維持されたことを明らかにした。また論文「延喜式内社穂見神社について」では、甲斐国巨麻郡の式内社の比定とその配列により、甲斐・信濃間連絡路を含む地域交通の様相について検討した。さらに報告「記紀伝承から読む古代の遠距離交通」では、記紀に見える甲斐国酒折宮伝承を、6世紀における内陸交通の視点から位置づける自説を再論した。 報告「唐日廐牧令の畜産印関連規定について」では、天聖廐牧令による日唐令の比較作業に着手し、日唐の馬印制度の相違から、日本廐牧令における馬匹生産の特色を考えるための予備的考察を行った。天聖令による日唐令の比較については、共著書所収の論文「律令と礼制の受容」および報告「「律令制」研究と「公民制」成立論」によって、律令制の定義や、日本におけるその成立過程についての基礎的考察を行った。 海外調査としては、9月に中国西安・運城市周辺において、唐代の道路、黄河周辺の橋梁、津、関所等の交通関連遺跡の調査を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初予定の、甲斐を中心とする中部山岳地域における内陸交通の様相の解明については、ほぼ計画通りの成果を上げることができた。また、本来は平成24年度に予定していた天聖廐牧令の検討について、前倒しで着手し、予備的考察ではあるが一定の成果を得た。全体としては、当初の計画以上に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度には、平成23年度の成果の公刊の準備を進めるとともに、律令制における馬匹生産体制と、甲斐などの内陸諸国に設定された御牧との関連の検討を行う。天聖廐牧令による唐令の復原についても、基礎的作業を行う予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
購入を検討した図書の刊行が遅れたため、若干の繰り越しが生じたが、刊行され次第購入費に充てる予定である。その他については、現在のところ当初の計画通り研究が進んでいるため、研究計画調書の予定にそって使用したいと考えている。
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