2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23520807
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Research Institution | University of Yamanashi |
Principal Investigator |
大隅 清陽 山梨大学, 教育学研究科(研究院), 教授 (80252378)
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Keywords | 古代交通 / 駅制 / 地域社会 / 廐牧令 |
Research Abstract |
第2年次にあたる平成24年度には、前年度に着手した、甲斐を中心とする中部山岳地域における内陸交通の様相の検討を進め、論文として成稿・投稿するとともに、日唐令の比較についての基礎的な作業を進め、論文2点、国際学会での報告1点、解説1点の成果を得た。 論文および報告「《天聖令》発現与日本律令制研究」(中文、邦題は「《天聖令》の発見と日本律令制研究」)は、北京大学と精華大学の歴史系の共催による国際シンポジウム「日本古代史研究的現在与未来」で発表したもので、北宋天聖令の発見が唐令復原研究にとって持つ意義と、日唐令の比較に及ぼす影響について論じ、合わせて、唐令の体系的・逐条的な継受は大宝令の編纂をもって始まるとの自説を展開し、その画期性を指摘した。研究代表者にとって、中国での初めての学会報告であり、天聖令研究について、中国の古代史研究者との意見交換を行うことができた。本報告は既に中国語訳が国際学術検討会論文集に掲載されており、主催者により、中国での出版も検討中である。 論文「甲斐の国の渡来人」は、講演記録より成稿したものであるが、大化前代から律令制期の甲斐における渡来系氏族の活動を論ずるなかで、山梨郡における馬匹生産の意義を再評価し、勅旨牧の一つである柏前牧を甲州市勝沼町に比定する可能性を指摘した。また、渡辺直彦著『日本古代官位制度の基礎的研究 新装版』「解説」では、官制を中心に日唐律令制比較研究の現状と問題点について論じている。 海外調査としては、10月に北京市近郊の房山雲居寺石塔、万仏堂・孔水洞石刻及び塔、戒台寺等で、隋唐から遼代にかけての史跡を現地踏査し、隋の大運河の起点でもある幽州周辺の交通について検討した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
天聖令研究については、当初予定していなかった国際学会での報告を行うことができ、成果の発信と国際的な学術交流という面で、当初計画以上の成果を上げることができた。また、前年度の内陸交通に関する成果については、論文化のうえ入稿し、公刊の目処がついた。廐牧令と牧における馬匹生産の検討についても、公表は次年度に持ち越したが、おおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度には、これまでの成果の公表を進めるとともに、天聖令を用いた唐廐牧令の復原についての成果をまとめる。またそれをもとに日唐律令制の比較を進め、日本の律令制における駅制と馬匹生産の構造的な特色についての考察を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
国際学会での発表などのため旅費の支出が多く、研究費使用の方針を若干変更したため、少額の繰り越しが生じたが、基本的に当初の計画通り研究が進んでいるため、研究計画調書の予定にそって使用したいと考えている。
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