2011 Fiscal Year Research-status Report
近世後期における豪農商層の政治的力量-人脈・情報・信頼-
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23520809
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
岩城 卓二 京都大学, 人文科学研究所, 准教授 (20232639)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 豪農商層 / 情報 / 人脈 / 信頼 / 手紙 |
Research Abstract |
本年度は、本課題の中核となる石見大森町の豪農商熊谷家に加えて、同家と手紙をやり取りしていた島根県江津氏沢津家と島根県津和野町堀家の文書を調査した。 沢津家文書は、島根県江津市図書館で管理されている。同家から熊谷家に発信された手紙は熊谷家文書に多数残されているが、沢津家文書には熊谷家からの手紙を確認することができなかった。同家文書が所蔵者から移動するにあたって、散逸したものと思われる。しかし、天保期の石見国の豪農商層に衝撃を与えた浜田藩転封に関わる史料群を多数確認することができたため、関係文書を写真撮影した。なお、同家文書は浜田市立図書館でも所蔵されていることが判明したため、24年度以降、調査する予定である。 堀家文書には熊谷家からの手紙が多数残されていることが確認できた。これにより堀家から熊谷家、熊谷家から堀家という双方向の手紙のやり取りを明らかにすることができ、豪農商層の人脈と情報網が幅広く知られるため、23年度は同家文書の調査を集中的に行い、約5000コマの写真撮影を行った。 熊谷家文書はこれまで未調査であった同家の経営に関わる史料を調査し、約2000コマの写真撮影を行った。 また、熊谷家住宅内展示スペースにおける熊谷家文書の活用について同住宅委託管理者と話し合いの場を設け、24年度以降、具体化することとなった。教育委員会・委託管理者の求めに応じ、市民向け講演会も実施し、世界遺産石見銀山観光ボランティアの方々と交流し、24年度以降、本課題の成果の社会への発信に協力することとした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
著書・論文での成果公表は最終年度に行う予定で、23年度はその基盤となる史料の調査・所在確認と次年度以降調査対象文書の確定をほぼ予定通り行うことができた。23年度に現地調査は実施していないが、島根県浜田市立図書館沢津家文書、大分県日田市広瀬家文書、九州大学に熊谷家および同家と交流のあった家・人物の手紙が残されていることが確認でき、24年度以降の調査・研究の足がかりをつくることもできた。 また、研究成果を社会に発信するための基盤も形成することができた。 以上から、本課題はおおむね順調に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
24年度は熊谷家・堀家に加えて、浜田市立図書館沢津家文書、大分県日田市広瀬家文書、九州大学所蔵史料の調査に加えて、浜田藩転封後に領主を追って福島県棚倉に移住した三好家文書と、広島県上下代官所文書の所在確認を行う。 また熊谷家住宅管理者用の小冊子を編集したい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究費の多くは、史料調査・整理の経費(旅費・写真紙焼き費用)にあてる。また一部を、熊谷家住宅管理者用小冊子の作成経費に充てる。
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