2013 Fiscal Year Research-status Report
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23520815
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
西別府 元日 広島大学, 文学研究科, 教授 (50136769)
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Keywords | 吾妻鏡 / 類聚符宣抄 / 駅家 / 駅家雑事 / 郡司・在地領主 / 王朝国家体制 / 宿 / 中国行程記 |
Research Abstract |
古代律令国家を支えた駅家を中心とする古代交通体系の解体過程と、古代官道を継承する道路沿線の地域にどのような社会的変化がみられるのか、ヒト・モノの移動や中央集権的物流の具体相を反映する文献史料や考古学的資料・情報も加味しながら、平安時代中後期(王朝国家体制期)の交通システムとその後の交通体系への移行を展望することを目的とする本研究では、その工程を、「史料収集」「文献学的考察」「考古学的資料収集」「地域史的考察と整理・制度史的考察と整理」に分けて遂行してきた。 平成26年度は、前年度やや遅れ気味であった「史料収集」の工程を、より強力に推進し、『平安遺文』など文書関係史料の確認をおえ、『類聚三代格』や『朝野群載』のほか、『吾妻鏡』など典籍類についても関係史料を博捜するとともに、「文献学的考察」としての先行研究の蒐集につとめる一方、その問題点や不十分な論点などを抽出し、蒐集した史料とあわせて検討を進めたことにより、駅家制解体以後の交通体系のありかたについて自分なりの構想をたてることができ、その一部を学会で報告した。 また「考古学的資料収集」の工程にあたる、考古学関系の学会誌・情報誌などから蒐集した10~13世紀にかかる遺跡・遺物の情報を整理し、具体的に駅家から宿への展開を想定しうる地域や、逆に継続を想定するのが妥当な地域、さらには主要な街道の変遷を想定せざるをえない地域などを抽出し、それぞれについて地域情報等を加味しながら、次年度以降に実施するフィールド調査の対象地を具体的に絞りこんでいく作業をすすめた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度までの達成度について「文献史料からの情報抽出とカード化が思うように進められなかった点」を反省して「(3)やや遅れている」と自己評価したが、平成25年度はこの点の遅れを取りもどすべく尽力した。この点に関して昨年度の実績報告書では、「そのために情報処理のためのコンテンツを整備するとともに、その作業などについて研究補助を依頼したいが、地方大学のつねで適当な院生がすくないことが頭痛のたねで、院生以外でもと高校教師などの実践力をもたれたかたを確保できればと摸索している。」と遅れを解消する方策を策定した。補助金によって、情報処理のコンテンツを充実させることはできたが、これをカード化するなどの面は、人材の確保が容易でなく、自身で実施・遂行するしかなく、多くの時間を費やした。作業の煩雑さと不十分さは否めないがその結果として、10世紀以後の展開について一定の見通しをえることができた。その点では前年度の遅れを取りもどせたものと評価したい。 また、「考古学的資料収集」の工程についても、前年度は「情報の収集まではいったが、その具体的検討までにはいたらなかった」として(3)の自己評価をしていたが、今年度は、積極的に学会等に参加するとともに、院生・学生の協力のもと、駅家・古代官道や駅家停廃以後の当該地域の情報を収集しながら作業をすすめるとともに、山陽道地域については江戸時代の基礎資料ともいえる「中国行程記」を調査し、主要道の変遷を検討した。その結果、古代官道から中世・近世の主要道の変遷や、具体的に駅家から宿への展開を想定しうる場所を抽出することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度に継続して「史料収集」「文献学的考察」「考古学的資料収集」の行程を並行的にすすめるとともに、交通システムの変化を地域社会の変質の動向のなかに確認できる地域を集中して検証する「フィールドワーク」的作業を、具体的かつ特定箇所に集中して実施する。また前年度までの史料収集作業のなかで見落としなどがないか、丹念に検討したい。とりわけ次年度の最終行程を開始するうえで、不足していることはないかを点検し、補足する作業をおこないたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
基本的には、平成24年度の到達度評価を「3」としたことに起因する未執行部分を、平成25年度で執行できず平成26年度に持ち越したかたちになっている。すなわち平成24年度に10万弱の未執行額があったので、平成25年度は「交付申請書」段階からすると10万弱が増えて100万弱の予算となった。そこで謝金を増加させて、人的資源の確保を図ったが、【現在までの到達度】の欄に記したごとく、その部分を代表者自身で担ったために、謝金や複写代その他が不要になったために持ち越しとなってしまった。 今年度の予算配分において、「交付申請書」と対比すると物品費と旅費を増加させ、人件費と「その他」を減額するかたちで、平成25年度に生じた未執行部分を解消していきたい。平成25年度に到達度を高めに設定しえたのは、各種情報処理のコンテンツ整備と、各地の研究者との情報交換に起因するところが多かったためであると考えるが、とくに今年度からは「地域史的考察と整理・制度史的考察と整理」の工程にはいることもあり、フィールドワーク的作業が増大するものと考えるので、対象地域の研究者とりわけ埋蔵文化財関係者との接触を密にするため、旅費を多めに設定した。平成26年度以降は、さまざまな校務分掌を免除される見通しなので、丹念に各地域を歩きたい。
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Research Products
(2 results)