2014 Fiscal Year Research-status Report
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23520815
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
西別府 元日 広島大学, 文学研究科, 教授 (50136769)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2016-03-31
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Keywords | 太子道 / 麻利子(丸子)宿 / 日本坂 / 駅路 / 三島地方 / 王朝国家体制 / 古代山陽道 / 古代東海道 |
Outline of Annual Research Achievements |
「文献の調査」の過程で生じてきた、古代の主要道路から中世の主要道路への移行がどのように展開するのかという問題意識のもと、今年度はフィールド調査を中心とする実態的研究にとりくんだ。申請書にいうところの「地域史的考察」の段階に入ったと考えている。対象は、古代の駅家跡の確認によって、その経路も比較的明らかになった山陽道とりわけ兵庫県西部と、東海道の静岡県中央部を選んだ。前者については、たつの市から上郡町の古代・中世の主要道を踏査し、法隆寺領荘園の登場によって、主要道が南に移り、鎌倉期に筑紫街道が登場したことを現地で確認した。 後者については、駿河国小川駅から横田駅への経路と文治5(1189)年の手越家綱による駅家設置の交通史的意義を検討し、先行研究・論文等で提唱されている古代東海道の日本坂越が事実なら、安倍川右岸に想定される麻利子駅の設置は、中世東海道成立の契機、在地領主による交通体系の掌握、さらには「宿」登場の意義の解明につながるのではないかという仮説をたて、日本坂の現地調査を行った。しかし、現状の日本坂越のルートには、人工的な道路造成の様相・痕跡が確認できず、この地を古代東海道の経路と考えるにはきわめて非実態的であるとの結論にたっした。 この二つの調査により、主要道路の継承を考えることは、より具体的な比較が必要と考え、年度の後半には、推定古代山陽道として提起されている地域(大阪府高槻市から神戸市)について、近世中国街道(大坂の歴史的成立以前は、平安京と山陽道諸国との主要な街道であったと推定される経路)と比較しながら踏破し、両者の継続性がきわめて高いことを確認した。 このような、フィールド調査の一方、中世の東海道における「宿」関係史料の存在を認知し、その原史料について文献学的調査を実施したが、勤務上における時間的な制約などもあって、その原史料の最終的確認には至らなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
対象とした両地域が、地理的感覚をまったく有しない地域であったため、周辺の地理的関係も勘案しつつ丹念に歩くことを主眼に、静岡市周辺や北摂津地域を踏査した。前者に関して、仮説をたてる段階で静岡県教育委員会編「歴史の道調査報告者」や、数編の論文等を参考にして、日本坂=古代官道論に依拠したために、現地調査の結果とのあいだに大きなギャップが生じてしまった。その意味で、古代から中世における地域の主要な街道の変遷論に、構想していた見通しについて修正が必要になっている。ただし、北摂地域については、前近代を通しての道路の継承性が想定されているので、静岡市周辺についても、おなじ方向での見通しが必要と考えるが、その論理的枠組みをどのようにすべきかを検討している。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は、最終年度にあたるので、研究の総括にあたるべき年であるが、全体的にやや遅れ気味であるとともに、研究進捗の過程で、申請時には想定していなかった課題も登場してきたので、総括すべき課題と、継続すべき課題との峻別を図りながら、前者についての活字化を進めたい。とりわけ「制度史的考察」については、平成25年度における学会報告以後、その整理が進んでいないので、その成稿化を図りたい。 「考古学的資料収集」について、昨年度、若干の積み残しが生じたうえに、研究補助にあたる院生も在籍しなくなったので、その部分の補填のうえで、総括的なまとめをしたい。この分野でいえば、全体的に情報が断片的であり、かつ調査主体がその後の調査や整理を進展させて遺跡・遺構の把握を深化しえていないという状況であり、見通し的にはやや暗いというところである。 「地域史的考察」の側面では、昨年度の調査・研究で一定の進展があったが、実地調査によって、文献等をもとにたてていた仮説が成り立ちえないのではないかという結果になり、その再解釈に呻吟しているが、なんとかこの面でも、一定の総括をしておきたい。
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Causes of Carryover |
平成26年度に生じた次年度使用額は、平成25年度において研究補助の謝金等で執行する予定であったものが、実際にはその複雑さゆえに研究資料の収集等を代表者自身が実施しなければならなかった(そのため謝金等を使用することが減少し)ために生じたものであった。そのため平成26年度には交付申請書段階より旅費等を多くして研究を実施したが、博士課程後期院生の博士論文の指導・審査等の校務で大学に常駐しなければならないことが重なり、史料の確認調査等が十分に実施できずに生じたものである。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
本年度は、研究計画の最終年度にあたり、収集してきた文献資料・考古学的資料をもとに「地域史的考察と整理・制度史的考察と整理」にあたるとしである。これまで検討してきた内容を、学会等で報告するとともに、文献の最終的確認や現地でなければ確認できない情報等も種々生じており、これらの調査等が必要になると思われるので、そのための旅費等にあてたいと考えている。
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Research Products
(3 results)