2013 Fiscal Year Annual Research Report
『新撰年中行事』の基礎的研究―東アジアにおける年中行事・歳時記の受容と変容―
Project/Area Number |
23520844
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Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
西本 昌弘 関西大学, 文学部, 教授 (00192691)
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Keywords | 新撰年中行事 / 小野宮年中行事 / 年中行事書 / 藤原行成 / 弘仁式 / 荷前別貢幣 |
Research Abstract |
『新撰年中行事』と『小野宮年中行事』に所載される行事項目を比較するため、対照一覧表を作成し、検討を進めた。両書は類似した行事項目をもつが、その相違点も大きい。両書はともに先行する年中行事書として『九条年中行事』を踏まえているので、『九条年中行事』の項目や内容が両書の類似点として現れているのであろう。『新撰年中行事』は弘仁・貞観・延喜の諸司式など古くに遡る多様な史料を引用して、すでに廃止されて行われていない行事も掲げているために、年中行事御障子文に近い現行行事を中心に編纂された『小野宮年中行事』とは大きく異なる本文をもっているものと考えられる。 本年度は、『新撰年中行事』所引の荷前別貢幣に関わる二条の推定弘仁太政官式逸文に検討を加え、これらが弘仁太政官式の逸文と考えてよいこと、二条の逸文から弘仁年間前後の荷前別貢幣のあり方がうかがえることを述べた。こうした事実を踏まえて考えると、荷前別貢幣はすでに延暦年間(782~806)には成立していたとみる学説の方が妥当であるということができよう。 全文が翻刻紹介された『新撰年中行事』には、さまざまな未知の史料が含み込まれており、これを詳細に検討することにより、古代史の諸問題を解明する手がかりを得ることができると思われる。
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Research Products
(10 results)